Part 5 原子力発電について(2)

エネルギー問題 Part 5
Part 5 原子力発電について (2)


5.4 原子力発電の必要性

これまで、原子力発電を進めるために、国と電力業界がかなり強引な手段を用いて 進めてきていることを見てきました。 そこで、一度原点に戻って考えてみたいと思います。

原子力発電はなぜ必要なのでしょうか?

まず、原子力発電を最も強く推進している、国の「エネルギー基本計画」(平成15年10月閣議決定)を見てみましょう。 これは、エネルギー政策基本法に基づき、 今後10年間の日本のエネルギー政策の基本的な施策方針を示すものです。 ここでは、原子力発電は次のように位置づけられています。

  1. 原子力発電は国際情勢の変化による影響を受けることが少なくウラン資源の供 給安定性に優れている。
  2. また、発電過程で二酸化炭素を排出することがないため地球温暖化対策の面で 優れている。
  3. 以上のことから、安全確保を大前提として、今後とも基幹電源と位置付け引き続き推進する。 原子燃料サイクルは原子力の供給安定性を更に改善するもの。 原子燃料サイクルの推進を国の基本的な考え方としており、 安全の確保と核不拡散を前提として、着実に取り組むことが必要。

つまり、燃料の供給安定性CO2排出がない、という利点があるため、安全、核不拡散に留意しつつ、 着実に原子力発電に取り組んでいきましょう、と述べています。

それでは、まず1の燃料供給安定性について考えてみます。
原子力発電の燃料であるウラン資源は、供給安定性に優れている?
ウラン価格20年ぶりの高水準に(東京電力サイト)
ウランの年間採掘量には限界があり、現在需要が供給をオーバーしているため、 供給安定性があるとは言えないようです。 今後もアジアでの需要の増加が見込まれ、供給が需要を上回ることはないという予想です。

ちなみにウラン235(再処理をしない場合)の可採掘年数ですが、四国電力サイトでは、61年と天然ガスと同じ(平成13年度資料)、 東京電力では64.2年となっています(平成12年度資料)。

つまり、ウランの資源量は石油の数分の一に過ぎず、 核燃料サイクル(高速増殖炉での利用)が不可欠なのです。 しかし高 速増殖炉は技術的、社会的に抱える困難が多すぎて、 一度は手を染めた世界の核開発先進国はすべて撤退してしまったそうです。 (京都大学原子炉実験所小出裕章氏「日本の原子力推進策は破綻した」:PDFファイル)

ウラン資源は貧弱であり、原子力を意味のあるエネルギー 源とするためには、 「燃えないウラン(U-238)」をプルトニウムに転換して利用する高速増殖炉計画が不可欠です。 そのことは原子力(核)開発の当初から分かっていましたし、 米国を含め核先進国は一度は高速増殖炉路線に足を踏み込みました。 世界で一番初めに原子力発電に成功したのはEBR-1と呼ばれる高速炉で1951年12月のことでした。 ところが、高速増殖炉は技術的、社会的に抱える困難が多すぎて、 一度は手を染めた世界の核開発先進国はすべてが撤退してしまい ました。

また、仮に高速増殖炉が動いたとしても、エネルギー問題の解決には役に立たないと小出氏は述べています。

実現したところで、エネルギー問題の解決には役立たない
高速増殖炉の燃料は天然には存在しないプルトニウムで、それは自分自身で作り出す以外にありません。 1基の高速増殖炉が動き出したとし、それが次の高速増殖炉を動かし始めるのに足りるだけのプルトニウムを生み出すのに必要な時間の長さを「倍増時間」と呼びますが、 電力会社の試算でも、それは 90年です。 日本では、過去120年以上にわたって平均で年率4.5%の割でエネルギー消費を拡大させてきました。 それは約15年で倍になるスピードであり、「倍増時間」が90年というようなエネルギー源では到底役に立ちません。 そんなものに、すでに日本は1兆円を超える投資をしてきましたし、今後更なる投資をしようとしています。

次にCO2排出についてです。
原子力発電は二酸化炭素を排出することがないため、地球温暖化対策の面で優れている、 という点は正しく、CO2は確かに排出されません。 CO2の排出量削減については、京都議定書の実現も危ぶまれています。 この問題に対して、原子力発電が有効なアプローチである、というのはその通りでしょう。

しかし一方で、原子力発電では、何百年〜何万年というスパンで放射能をまき散らす、放射性廃棄物が出るのです。 既に現時点でも、広島原爆の核分裂生成物の量の90万発分に相当する量が出ています。 私には、「二酸化炭素が出ない=クリーン」という見方は、一面的であるように思えます。 コスト、国のセキュリティー、安全性、トータルで考える必要があるのではないでしょうか。

この安全面についての問題はどうでしょうか。
国や電力会社の説明では、安全性は何重にも担保されており、暴走するような事態はあり得ないということです。 しかし、人間がすることにミスは付き物です。

また日本で度重なってきた事故でも、原子力推進派はいつもその度ごとに「予 想を超えた事態だった」と言い続けてきました。 1995年の高速増殖炉原型炉もんじゅでのナトリウム漏 洩火災事故、1997年の東海再処理工場での爆発事故も、 まったく想定外の事故でした。 1999年秋には、茨城県東海村の核燃料加工工場で臨界事故が発生し、2人の労働者が筆舌に尽くしがたい苦悶のうちに死に至りました。 臨界事故などは世界ではすでに20年も前に根絶されていたもので、まさかそんな事 故が起きるとは原子力関係者の誰一人として思っていませんでした。 また、2001年11月に浜岡原発1号炉で起きた一次冷却系配管内での水素爆発も、 それが起きてしまうまでは誰も予想だにしなかった事 故でした。 それでも、そこに危険物があるかぎり、やはり事故は避けられずに起こります。
(前出:小出裕章氏「日本の原子力推進策は破綻した」より)

そして2004年8月、美浜原子力発電所の配管破損により4人の死傷者が出てしまいました。 完全に安全なシステムが存在しません。 そして、原子力発電は何かあった場合の被害が非常に大きいことが特徴なのです。 それこそが、原子力発電において安全性が重視される理由です。

5.5 まとめ

原子力発電は様々な問題を抱えながらも、「国策」として政策に組み入れられ、 進められています。 しかし見てきたように、そのストーリーには疑問を持たざるを得ない点があるのも、また事実です。

もしこの政策が正しく、そのシステムも運用も万全なのであれば、 隠すことはなにもないはずです。 税金や電気料金という形で、我々も原子力発電の費用を負担しているわけですから、 我々一般市民に対してきちんと情報を提示する義務があります。 この義務を果たしていないことが明らかになったことが、私が今回の問題を重視する点です。

原子力発電には非常にコストがかかります。 毎年何千億という税金が注ぎ込まれ続け、また核燃料廃棄物の処理などの費用も、 計算で何兆という金額が動くほどです。

と言っても、原子力発電をすぐにやめるということは現実的ではありません。 対案としても、残念ながら確実なストーリーはありません。 しかしこの原子力発電にかかる莫大な費用を、新エネルギーや、燃料電池などによる分散型発電などに分配していくことで、 実現の可能性が上げる必要があるのではないでしょうか。

皆さんはどう考えますか?

5.6 参考サイト

  1. 日本の原子力推進策は破綻した(小出裕章:京都大学原子炉実験所)
  2. AQUARIAN:原子力問題
  3. 「東海村ウラン加工施設での臨界事故を検証する」(小出裕章:京都大学原子炉実験所)
  4. 市民的危機管理入門
  5. 高速増殖炉「もんじゅ」が抱える問題点
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このページは、2000年3月 8日 18:00に書かれたブログ記事です。

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