Q&Aの答え1
〜Infomation about soap & soap making〜


**石鹸ってどんないいところがあるんですか?

 石鹸と合成洗剤の是非は、あらかじめどちらかの立場に偏向しないで論じたいのですが、世間にはいろいろな意図を持った人が多いようで、私たち一般消費者には非常にわかりにくいものです。しかし、そういう話題に関心が高ければこそ、企業もそれに配慮した製品作りに取り組んでいくことになるはずです。

 前置きが長くなりましたが、まず石鹸の長所として、
 
  1. 脂肪酸ナトリウム/カリウム塩は、人体にとって馴染み深い物質で構成されており、安全性が高い。
  2. 地域によっては、使用に長い歴史があり(日本は明治に入ってから)、人体への危険性が少ないことが経験的に実証されている。
  3. 洗浄力、起泡力に優れ、人体を洗うのに快適な製品を作れる。
  4. 肌に必要な皮脂を取りすぎず、理想的な肌の洗浄剤である。
  5. 合成洗剤に比べれば高価だが、十分安価といえる。
  6. 環境中に放出されたときの生分解性が高い(環境汚染が少ない)。

などということが挙げられます。手作りであることのメリットは、

  1. 使うものの成分を把握でき、排除・添加が自由で、安全性を選択できる。
  2. しっとり感や香りなどの多くのことをカスタマイズできる。
  3. 鹸化法で製作することで、グリセリンの多く含まれた石鹸を製作できる。
  4. 市販石鹸と変わらない値段で、良質の石鹸が製作できる。

ということが考えられるでしょう。下覧の短所も合わせて、あなたなりに考えてみてください。

**石鹸の短所ってどんなところにあるでしょうか?

 では短所は、、 
  1. 水のミネラルが多い(硬度が高い)場合、脂肪酸がミネラルと結合して沈殿する金属石鹸を形成するので、使用が困難。(日本の水道水は世界的に稀に見る軟水なので、問題になるケースは比較的少ないようです)
  2. 水溶液が適度にアルカリ性でないと、洗浄力を発揮できない。(市販の製品は炭酸ナトリウムなどを助剤としてpHを上げる工夫がされていることもあるようです)
  3. 石鹸の材料は食糧となりうる油脂であり、石鹸にするのは勿体無い。
  4. アルカリ性ゆえに、ある種(絹や羊毛など)の衣料の洗浄には、適さない。
  5. 衣料の洗濯に使用する場合は、脂肪酸の残留によって黄ばみ、悪臭が発生することもある。(定期的に漂白すればいいのですが、、)

などということが挙げられます。手作りであることのデメリットは、

  1. 人件費を繰り入れると、単価は極めて高価であり、効率は悪い。
  2. 知識・設備の不備により、家庭での製品管理は困難で、結果的に質のよい製品が得られない場合もある。
  3. 劇薬使用による事故などのリスクがある。
  4. 環境中に高アルカリ液が放出されて、水まわりの設備の劣化を招く可能性もある(中和してから捨てましょう)。

 手作り石鹸を購入するという手もアリなのですから、その人ごとの環境や好みに応じて、選択の余地がある状況がいいですよね。

**肌には弱酸性がいいんですか?

 そんなことはないと思います。肌は、酸性に強くアルカリ性に弱いことは事実ですが、肌へ悪影響が出るほど石鹸のアルカリは強くないですし、皮膚に石鹸の泡がある時間は非常に短いので、まず問題にはなりません。

 肌の洗浄に石鹸が優れているのは、皮脂を取りきらないところにあります。
 肌の上の皮脂は、汚れであると同時に肌を乾燥や刺激から保護する役割を持っているので、取り過ぎは毒です。このような適度な脱脂力は合成洗剤にはないものですから、個人的に私は肌の洗浄には、アルカリ性のものでもそうでなくても、合成洗剤よりも石鹸がよいと思っています。

**天然成分、植物成分は肌によいですか?

 結論から言えば、「何からできていようと関係ない」です。

 物質が混ぜ物のまったくない、純粋な状態であれば、天然由来であっても合成されたものでも同じ物質なのですから、同じ物です。また自然界に存在しなかった合成物が、必ずしも天然に存在するものより劣るということもないです。そもそも有用でなければわざわざ合成する必要もないでしょう。天然の物質でも、有毒のものもありますし、たくさん摂取したり、加工したりすれば有害に転じるものもあります。

 合成であることを理由に、合成物を排除するのは、文明を否定するに等しいものです。

 しかし天然の物質に全くアドバンテージがないかといえば、そんなことはありません。それは、昔から使い続けていて支障がないことが、経験的に実証されている点にあります。

 合成物は、もちろん厳しいテストを経て市場に出されますが、多種多様な物質との相互作用や、継続使用による影響は物理的にテストできませんから、支障が出てきて初めて、使用停止することになります。言い方は悪いですが、人体実験をしているようなものです。
 また昔に使用していたものが、すべて素晴らしいものであるかというともちろんそんなことはなく、例えば平安時代の貴族女性の使用していたおしろいには水銀が入っていて、老年になると肌がぼろぼろであったといわれています。しかし、何らかの不都合が判明しているものはその時点で淘汰されていきますから、現在まで使用しているものは、安全性が高いと考えられるわけです。

 しかし、それは昔から使っているものを、同じように使っている場合にのみ適合できる話です。合成物の危険性は、もしあるならば、その物質そのものの毒性もありますが、製造工程で混入する不純物が悪さをすることにもあります。天然のものから何か物質を新たに抽出したり、加工して添加する場合には、合成物と同じ対応をするべきでしょう。

 天然成分、植物成分というのは、あたかもいいもののように喧伝された結果、そう思い込まされていますが、天然成分であること、植物成分であることそのものは、人体への影響、製品の品質として優れているということを意味するわけではありません。

**スクワラン、スクワレン、って何ですか?

 スクワランとスクワレンは、ほぼ似たような物質で、原料から取れるものが不飽和炭化水素のスクワレン、これに水素を添加して飽和炭化水素にしたものがスクワランです。スクワランの分子式はC28H57で、無色透明、無味無臭、比重0.805〜0.812、屈折率1.451〜1.457、沸点は約330℃、鹸化はしません。

 製造法としては、
1、鮫の肝油の不鹸化物から減圧蒸留。
2、オリーブ油(0.3〜0.7%含む)から分離抽出。
3、イソプレンからの合成。
の3種類があり、年間1000トン前後の生産のうち、ほとんどが鮫由来であるようです。ちなみに900tが日本で生産され、うち800tが国内向けだとか。日本は世界一のスクワラン大国だったんですね。
 1998年では7つのメーカーが生産しており、価格は2500〜4000円/kg程度。

 化粧品として好まれるのは、人間の皮脂の中には、スクワレン、スクワランがともに含まれており、肌との親和性が高く、浸透性に優れているためのようです。

**石鹸でどうやって髪を洗うんですか?

  昔、お笑い芸人の下積み時代の貧乏自慢話で、食器用洗剤で洗髪するというのがありましたが、今の人で、シャンプー以外のもので洗ったことのある人は実は少ないのではないかと思います。でも、実は固形石鹸でも十分髪は洗えるんです。

 手作り石鹸は、泡立ちが比較的貧弱なので、泡が好きな人はまず泡の立つ石鹸を用意します。個人的には、米糠石鹸はねっとりとした多量の持ちの良い豊かな泡が立つので、シャンプー用としてお気に入りです。
 髪を十分に濡らし、洗面器にお湯を汲みます。それで、石鹸を生え際からこすりつけていきます。洗面器のお湯は石鹸の滑りをよくするためのもので、石鹸を濡らしつつこすりつけ、生え際からてっぺんに向けて、石鹸を行き渡らせて行きます。
 すすぎは簡単、泡切れは極めて良好です。好みでリンスします。

 ポイントは、
1.洗髪で洗うべきは、髪ではなく、地肌である。
2.髪に不要な力をかけない。
 ことにあります。
 髪の汚れは、残りの石鹸分と水で十分洗えるので、髪に石鹸をつける必要はありません。また髪の傷みというのは、物理的な損傷があったときに起こるそうで、しかも髪は再生する機能を持ちませんから、一度傷ついた髪は元には戻りません。物理的損傷というのは、無理やりブラッシングしたりして、キューティクルを剥がしてしまうようなことです。

 石鹸は、個人的に洗髪にはベストではないと思います。髪は、アルカリに合うと膨潤し、キューティクルが開きます。そのためにきしきしした感じになるらしいのです。この状態の時は非常につっかかりやすいので、髪に損傷を与える可能性が高いと思います。ですから、髪のもつれは後で除くとして、さっさとリンスを済ませてしまいましょう。

 そういうデメリットがありますが、合成シャンプーは残留が気持ち悪いし、石鹸洗浄のさっぱり感は捨てがたいものがあるの、私は石鹸洗髪を選択しています。

**クエン酸リンスって何ですか?

 石鹸で洗髪すると、髪がアルカリ性に傾き、またキューティクルが開くので、これを直してやるとよいという指摘があります。しかし、短髪で特に必要ないという人もいらっしゃるので、好みでいいことなのでしょう。

 リンスの役目上、酸性溶液が望ましいことから、簡素な方法としては食酢をそのまま洗面器に20〜30ml程度入れたものを使用することが広く行われています。
 でも、個人的に酢の匂いが洗髪後するというのはいまいち快適なものではないので、そういう人が一般的にしているのがクエン酸リンスです。

 クエン酸は呼吸回路の基本的な化合物として登場するように、内服、外用ともに安全性が高いといわれており、安価で入手が容易です。薬局で500g1000円前後で購入できる、白いすっぱい粉末です。

 クエン酸の粉を直接洗面器に入れたり、髪につけたりしている人もいらっしゃるようですが、ここではストック液として400ccの水に50gのクエン酸を溶解させたものをお風呂場に置いておきます。これを洗面器に30ml程度入れてリンスすれば、石鹸洗髪によるきしきしが瞬時に取れます。またストック液に、好みのエッセンシャルオイルを入れておけば、髪がふうわりいい匂いになってウレシイです。
 pHが低いので、ストック液がカビたりする可能性は低いかと思いますが、もちろんカビたらすぐ捨てて冷蔵庫保存に切り替えてください。

 このような機能から、合成シャンプーを使用してクエン酸リンスを施すことにはまったく意味がありません。

**アミノ酸石鹸は石鹸ですか?

 違います。
 石鹸という名前を冠しているくせに、石鹸でないものに、アミノ酸石鹸というものがあります。これは、アミノ酸をいじったものを脂肪酸の代わりに使ったもので、どちらかというと合成洗剤に近いものです。
 アミノ酸はタンパク質の構成分子で、通常人体に無害なものですが、化学的にいじったアミノ酸はもはやアミノ酸ではありません。原料がアミノ酸だから肌にやさしいということは、別にありません。

 でも目の仇にすることはないと思いますです。アミノ酸石鹸シャンプーは石鹸シャンプーよりも使用感がよく、合成シャンプーからの転換がしやすい、合成と石鹸の掛け橋という捉え方をする人もいます。
 選択は個人の自由でしょう。ただ、情報は欲しいですよね。

**石鹸を使うと、水道管が石鹸かすで詰まるそうですが?

  この件に関しては、このサイトの親ディレクトリであるページに詳しいので、
こちらを参照下さい。ずぼらな方のために結論を言えば、「そんなことはない」ということだそうです。

**作った石鹸を売りたいのですが?

 石鹸は、薬事法で化粧品に指定されており、その製造(小分けを含む)・輸入・販売を行う場合には都道府県などへの登録が必要となります。
 また石鹸の製造を業として行う場合、水酸化ナトリウムなどの劇物を使用する関係で、「劇物及び毒物取扱法」上の規制もあるようです。

 私の石鹸を見て、「売れるよ、コレ」といってくれる友達もいます。日本でプロソーパーが出現することは喜ばしいことかもしれませんが、経験豊かなソーパーさんが数多くいらっしゃる中、自分の石鹸は商品レベルに達しているか?という冷静な視線も必要かと思います。
 
 石鹸が余ったら、洗濯に使ったり、お友達にプレゼントするなどいくらでも処分(?)する方法はあるのですから。

Copyright 2000-2007 RuRu. All rights reserved.
mailto:kurikom@hotmail.com