企画2・鹸化価を自力で計算しよう
〜Let's get the saponification value by yourself !!〜


 珍しい油脂がたくさん手に入って、よし、石鹸にしようと思ったとき、ふと困るのが、鹸化価。鹸化価がわからなければ、石鹸は作れない、、。
 鹸化価は、高校の化学で求めさせるくらいですから、四則演算だけとはいえ、計算はちょっと面倒ですが、まずは挑戦してみましょう。
1、アウトライン
 鹸化価を求めるためには、大まかに、
  1. 油脂を構成している脂肪酸の名称と、構成比率を調べる。
  2. 脂肪酸の平均分子量を求める。
  3. 鹸化価を計算する。

というプロセスを踏みます。

 何故そうなるかという理屈は、高校化学で習います。説明すると間口が広くなるので、今回は割愛します。理屈がわからなくても計算できるという状態を目指します。
 ここでは、サンプルとして「
茶の実油」の鹸化価を計算します。

2、脂肪酸の名称と構成比率を調べる
 油脂は、脂肪酸3分子とグリセリンがくっついて構成されていますが、脂肪酸には多くの種類があります。鹸化価を知りたい油脂が、どのような脂肪酸をどのような割合で含むかを知る必要があります。

 基本的には、その油脂のメーカーに問い合わせれば教えてくれるはずです。
 しかし自分で抽出した油脂だったり、誰かのお手製の頂きものであった場合、この方法は使えませんので、食品成分表をあたるか、日本油脂検査協会などに問い合わせるなどを試みてみましょう。

 何らかの方法で、知りたい情報が得られたとします。この過程で、鹸化価そのものを教えてもらえる場合もあるでしょう。その場合は、ザッツ・オール。

 「茶の実油」の構成は、

  • オレイン酸   80.5%
  • パルミチン酸  8.7%
  • リノール酸    8.1%
  • ステアリン酸  1.9%
  • エイコセン酸   0.5%
  • リノレン酸    0.3%

であることが判明しました。
 ちなみにこれってオリーブ油に構成がかなり似ています。もし脂肪酸構成が非常に似ていて、鹸化価が既知であれば、そちらの値を流用するのが実用的ですね。 
 油脂には、アルカリに反応する「鹸化物」反応しない「不鹸化物」が混合しているのが普通です。石鹸作りに使う油脂の多くは、不鹸化物含有率は2%以下なので、特に考慮しなくてもよいと思われますが、一部ホホバ油などの例外もあるので、注意して下さい。

2、脂肪酸の平均分子量を求める
 下表の脂肪酸の分子量に、含有比をかけて、平均分子量(M)を計算します。

平均分子量(m)=282*0.805+256*0.087+280*0.081+284*0.019+324*0.005+278*0.003

=279.812

280

 桁数が大きくなったら、3桁程度に丸めて次に進みましょう。桁数を大きくしても、結果には大して反映されないからです。

脂肪酸 ラウリン酸 ミリスチン酸 パルミチン酸 ステアリン酸 オレイン酸  リノール酸 リノレン酸  リシノレン酸  エイコセン酸 
分子量 200 228 256 284 282 280 278 298 324


3、鹸化価を求める
 油脂の平均分子量(M)=脂肪酸の平均分子量(m)*3+38

なので、「茶の実油」では、

 茶の実油の平均分子量(M)=280*3+38
                   =878

 油脂1分子に対し、水酸化ナトリウムは3分子(40*3=120)反応するので、

 油脂の鹸化価(水酸化ナトリウム)=120/油脂の平均分子量(M)

 水酸化カリウムの場合は、上式の120を168に換えて計算します。

 茶の実油の鹸化価(水酸化ナトリウム)=120/878
                         =0.13667.......
                         ≒
0.137

 不鹸化物含有が高い場合は、それを考慮しなくてはなりませんが、この油脂に関しては必要ないと思われます。めでたく、鹸化価が計算されました! オリーブ油の値は0.134ですから、まずまず近い値と言えるので、合っていそうです。

 水酸化ナトリウムに対する鹸化価は、一般に0.13前後であり、ラノリン、ホホバ油などの例外を除けば0.1〜0.2の間に収まるのが普通です。もしこれから外れていれば計算ミスをしている可能性があるので、もう一度チェックしてみて下さい。


 何だか全然わかりやすくないですね。これで、計算してもいいと思う人が出るとは思えないな、、、。徒労だ、、。 


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