感想メモ:ウィニング 勝利の経営

ウィニング 勝利の経営
ウィニング 勝利の経営
  • 発売元: 日本経済新聞社
  • 価格: ¥ 2,100
  • 発売日: 2005/09/13

★★★★☆

名経営者として名高いGE元CEOのジャック・ウェルチ。
彼が語る、経営の考え方、ノウハウなど、仕事に関する様々な経験談。

その中身は、ミッションステートメントから人材採用、
人事評価、予算策定、ライフワークバランスと幅広い。
紹介されている考え方は、オーソドックスなものが多い。
しかし、それを現実に実行できるところは極めて少ないだろう。

まず、どの会社にも決めているだろう、ミッションステートメントや価値観について。
あるにはあるものの、浸透してはいないケースが多いものだろう。

効果的なミッションステートメントは、基本的に
次の問いかけに回答を与えるものである。
「私たちはこのビジネスでどうやって勝とうとしているのか」

バリューというのは単に行動規範のことだ。
具体的で、詳細にわたって、明確に記述されており、
想像の余地のないものだ。

次に「率直さ」について。

私は常に率直であれ、言うべきことを言おうと主張してきた。
(中略)それがいかに稀なものか、見誤っていたことに気づいた。

本音で話さない方が楽だから、心に思ったそのままを話すべきでないと、
人は思うようになる。

「意を酌む」「出る杭は打たれる」文化の日本ではなおさらだろう。
アメリカでも会社内での率直さは欠けているのだな、と思ってみたり。
では、どうやって率直にモノを言う雰囲気にできるのだろう?

率直さを引き出すためには、報酬を与え、褒め、語り続けることだ。
だが、実に単純なことだ。率直であればごちゃごちゃせずにすむから、
うまくいくのだ。

つまり、信じたものがバカを見ないように、トップが執拗に繰り返し発言、
行動していくのだろう。ウェルチがやったように。

ウェルチと言えば、「20-70-10」で有名な「選別」についても触れられている。
トップ20%はスターとして報酬などを特別扱いし、モチベーションとする。
そして、パフォーマンスが下の10%の人には、辞めてもらう方が
本人の将来のためにもなる、という考え方。
人には向き不向きがあるので、考え方としては納得できる。
しかし、実行することを考えると、とても難しいことだろう(特に日本では)。

ウェルチが考える人材採用の際のチェック指標も紹介されている。

・4つのE(と1つのP)のフレームワーク
Energy、Energize、Edge、Execute(Passion)

「情熱」という言葉を見るたびにいつも思うのだが、
情熱というのは後天的に得られるものなのだろうか?

予算の決め方というのも、不思議なものの一つ。
年度末の予算消化とか、事業仕訳どころではないムダが潜んでいる気がする。
アレがなくなれば、多くの組織の予算は10%以上減らせるのではないだろうか。

「予算を消化した実績で、次の年の予算が決まる」
「予算を余らせると怒られる」
というのはいつも納得しかねる。

一方、ウェルチが作ったGEでの予算の決め方は根本的に異なる。おもしろい。

個人そして事業部に対する報酬は予算の数字とは関連付けされない。
前年の業績あるいは競合相手の業績と比較して検討され、
現実的な戦略機会と障壁を考慮に入れて考えられる。

つまり、自分たちで目標をセットするのではないのだ。
ただ、最後の「考慮して」をきちんと行うことができないと
納得感はなくなるだろう。

この方針の転換は、根付くまでに数年を要したそうだ。
しかし、できるだけ低い目標をセットしようとする努力、
その目標をできるだけ上げようとする努力をなくせるのならば、
取り組む価値はある。

会社組織で働く人ならば、読んで気づくことは多いだろう。
これから就職する人も読んでおくとよい本。
すぐにはわからなくても、いずれ「このことか!」と思う日が来るはず。

さすがウェルチ、と思わされた。
オススメ度は★4つ。良い本です。

ウィニング 勝利の経営
ウィニング 勝利の経営
  • 発売元: 日本経済新聞社
  • 価格: ¥ 2,100
  • 発売日: 2005/09/13

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