「★★★★」カテゴリーアーカイブ

感想メモ:アフォーダンス-新しい認知の理論

アフォーダンス-新しい認知の理論 (岩波科学ライブラリー (12))
アフォーダンス-新しい認知の理論 (岩波科学ライブラリー (12))
  • 発売元: 岩波書店
  • 価格: ¥ 1,260
  • 発売日: 1994/05
  • おすすめ度 4.5

★★★★☆

 流し読みでしっかり理解できていないのだが、その範囲でざっくり内容を書く。

 大体の内容は、「アフォーダンス入門」と共通である。しかし本書の方が、アフォーダンスの開祖ギブソンが、アフォーダンス理論にたどり着くまでの流れを追って書かれているため、理解しやすかった。以下ポイント。

  • 「環境や物はそれ自体が情報を含んでいて、動物はそれを見つけ出す」という考え方≠「動物が脳で映像を処理して情報を作り出す」という考え方
  • 視覚に基づく認識は、網膜に形成された像だけでは説明がつかない
     :錯覚、脳による像の補完、対象の動きによる立体の把握、網膜で像を作る動物の方が少ないということ、など
  • 自分を取り囲む様々な光の中に様々な情報が含まれている
     :対象の距離、傾き、大きさ、早さ、自分との位置、自分に到達するまでに時間、自分の体勢、移動速度、など

 もっとゆっくり読めば理解が深まった気がする。
アフォーダンスについて知りたいなら、「アフォーダンス入門」よりもまずこちらがいいと思う。


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感想メモ:おもてなしの経営学

おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書)
おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書)
  • 発売元: アスキー
  • 価格: ¥ 790
  • 発売日: 2008/03/10
  • おすすめ度 3.5

★★★★☆

 「Life is beautiful」の中島聡氏の本。

 Appleの強みは、ハード・ソフト面での徹底的なUesr Experienceの設計(=おもてなし)にある、という話が最初。次は月刊アスキーでの連載内容の再掲。ここまでで前半2/3。残りは西村博之、古川享氏(マイクロソフト日本法人元会長)、梅田望夫氏との対談。ここは読み物。

 中島氏がすごいhackerであるということは知っていたが、古川氏との対談でかつてのASCII、Microsoftの内情が語られている中で、WindowsやExplorerのインターフェースの開発に関わった凄腕であることを、この本を読んで初めて知った。

 「パラダイス鎖国」と同時期に読んだのだが、個人的には技術的な話が多い本書の方がおもしろく読めた。Microsoftにいた氏であるだけに、MicrosoftとAppleの対比の説明には、説得力がある。ビル・ゲイツはGeekと見られているが、彼の強みはむしろスーツ族としてのビジネスの進め方にある、という話もおもしろい。

 ITが好きな人には★4つ。好きでない人には3つかな。

ちなみに中島氏は最近iphone向けのソフトを開発しで、会社を立ち上げてリリースしている。
その経過がサイトに書かれていて、おもしろい。

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感想メモ:TIME HACKS!

TIME HACKS!
TIME HACKS!
  • 発売元: 東洋経済新報社
  • 価格: ¥ 1,575
  • 発売日: 2006/12/01
  • おすすめ度 4.5

★★★★☆

 80個程度のlifehackネタが提供されている。他のlifehack本同様すべてを生活に取り入れるのは現実的ではないので、気に入ったものをピックアップして試してみると使い方をするべき。

 この本でも、lifehack本に共通して出てくることは押さえられている。例えば「午前中の頭が元気な時間を有効に使う」「メールチェックは最低限にする」「しっかり計画を立てる」「全部引き受けないで自分の時間を確保する」といった類いだ。STUDY HACKS!が既読なので、結構かぶった。

 重要なのは、目的と手段を区別し、目的の方を押さえることだ。例えば「ポストイットをこうこう使う」のが重要なのではなく、「タスクをモレなく優先順位を処理する」ことが大事なわけだ。こう考えれば、「lifehackで空いた時間をlifehackに費やす」のようなことはしなくて済むはず。

 結構思想が似ていたので★4つ。

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感想メモ: 「経験知」を伝える技術 ディープスマートの本質

「経験知」を伝える技術 ディープスマートの本質 (Harvard business school press)
「経験知」を伝える技術 ディープスマートの本質 (Harvard business school press)
  • 発売元: ランダムハウス講談社
  • 価格: ¥ 2,310
  • 発売日: 2005/06/23
  • おすすめ度 4.5

★★★★☆

 「ディープスマート」とか言われると意味がわからないが、要するに「上級者・熟練者が身につけている、経験に基づいて養われた経験知」みたいなことらしい。だからこそ、伝達が難しいということ。文化や価値観(ここでは「信念」と呼ばれている)が異なる場合は、特に難しい。

 で、じゃあどうすれば伝えられるのよ、ということだが、結局「良いコーチと共に、実際に体験することで効率良く伝えられますよ」となっている。こういうお題で思い浮かぶのが野中郁次郎氏の「暗黙知」だが、彼の「SECIモデル」の「S(Socialization:共同化)」について詳しく述べた感じだろうか。
(野中氏の暗黙知やSETIモデルについては以下がわかりやすい。
http://www.yuhikaku.co.jp/shosai/20c/20001201.html
http://www.cao.go.jp/innovation/action/conference/minutes/minute3/siryou2.pdf

 とりあえず、ディープスマートという言葉の意味がつかめたことが収穫か。


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感想メモ:したたかな生命

したたかな生命
したたかな生命
  • 発売元: ダイヤモンド社
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2007/11/16

★★★★☆

 生命の持つロバストネス(頑丈さ)には、知れば知るほど感心させられる。この生命が進化の末に獲得してきたロバストネスの仕組みについて、それを実際に技術として実用化した例を交えながら説明されている。

 内容は下のようなもの。

  • システム制御方法:netative/positive feedback, feedforward
  • 冗長性、多様性、モジュール構造、デカップリング
  • ロバストネスのトレードオフ

 長年の進化の果てに獲得された仕組みだけに、感心させられる例が多かった。

 他に、生命の仕組みを技術として用いている例を紹介している本としては、赤池学氏の「自然に学ぶものづくり」「昆虫力」などがある。★4つ。


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感想メモ:アイデアのヒント

アイデアのヒント
アイデアのヒント
  • 発売元: 阪急コミュニケーションズ
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2003/01

★★★★☆

 アイデアを生み出すための方法について、アイデアが命である広告業界で活躍した著者が記した本。基本的にヤングの「アイデアのつくり方」を踏襲しているが、もう一歩深く説明している感じ。(「アイデアのつくり方」についてはレビュー済み
感想メモ:アイデアのつくり方

 プラスされている内容は、「楽しむ」「自分を信じる」「興味を持つ」「質問を変えてみる」などの要素。これらはまさにアイデアを考える際のヒントとなる、心構えのようなもの。

 「アイデアのつくり方」と合わせて、次に読むとよいと思う。

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感想メモ:グーグル革命の衝撃

グーグル革命の衝撃 (NHKスペシャル)
グーグル革命の衝撃 (NHKスペシャル)
  • 発売元: 日本放送出版協会
  • 価格: ¥ 1,050
  • 発売日: 2007/05

★★★★☆

 皆さんご存知Googleという会社についての本。Stanfordの学生2人がページランクという手法を使った検索エンジンを開発して、コンテンツ連動のオンライン広告によってメキメキ成長して来て、福利厚生が異常に充実してて倍率が異常に高く天才が集まってますよ、というところはよく知られたところなのでいいだろう。

 本なのだからその先がないとしょうがないわけだが、インチキSEOへの対策、グーグル爆弾と呼ばれるイタズラ、個人情報の取り扱いについての係争など、ネタは色々あって楽しめる。

 しかしストリートビューの件でもわかる通り、この企業の懸案事項はプライバシー保護とのバランスである。広告ビジネスの成長もさすがに鈍化しているが、もはやインフラとなっている感もあるGoogle、今後どういった方向に進もうとしているのか注目したい。

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感想メモ:虚妄の成果主義

虚妄の成果主義—日本型年功制復活のススメ
虚妄の成果主義—日本型年功制復活のススメ
  • 発売元: 日経BP社
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2004/01

★★★★☆

かなり旬は過ぎた感があるが、一応。

著者は高橋伸夫、東大経済学部教授。
バブル前後を含め、数十年経済学界に身を置いてきた著者の主張は簡潔だ。

「人は金で動くのではなく、金銭を仕事の動機付けにするのは間違いである。
『お金は年功主義で保証し、仕事で報いる』という日本型年功主義を見直そう」

というもの。

このことを示す上で非常に興味深かったのは、ある実験例で、
被験者にパズルを4セット解かせるというもの。

2セット終わった所で自由時間を入れるのだが、
休憩時までに解いた数に対して報償を支払う場合(A)

報酬を支払わない場合(B)
で、自由時間の過ごし方に差が見られるというのである。
(ちなみに休憩時間は実験者は部屋から出て行き、周りに人はいない)

差というのは、
「片方が自由時間にパズルを解かず、休憩を取る割合が多い」
というのだが、
それは、休憩が多いのは報酬が支払われた(A)か?
と思うとそうではなく、なんと(B)の方なのである。

(A)の場合は「報酬のためにパズルを解く」事になるのに対し、
(B)の場合は「パズルを解くこと自体が楽しい」状態になるからなのだろう。
これは誰しも経験がある、
「同じことでもやらされるとたのしくなくなる」
というやつだろう。

人が最高のパフォーマンスを発揮するのは、
お金のためにがんばっているという状態ではなく、
「そのこと自体が好きであるため、いくらやっても苦にならない」
という状態なのだろう。

成果主義ではこういう状態になることの助けにならず、
むしろ年功制で生活に対する保障をした上で、
仕事の内容で報いる日本型年功主義の利点を
再確認することが必要なのだという。

金銭が全くモチベーションになることはない、
と言っているわけではないが、
弊害の方が多いですからやめた方がいいですね、という話だ。

人のパフォーマンスを上げる「動機付け」についての理解が深まる上、
日本型経営についても興味深い、良著でした。

日本で導入された成果主義は、成果主義の皮をかぶった
人件費削減であることが多いので、そこを切り分けてから
議論する必要があるような気もするが。

ちなみに2008年6月の著者のインタビューでは

2004年に出版した『虚妄の成果主義』(日経BP)が思いもよらずベストセラーになったことで成果主義に関する取材をいまだに受けますが、少々辟易しています。経営学者である私の専門は経営組織論や意思決定論で、人事労務問題が専門ではありませんから。もう成果主義ではなくて、専門の企業経営について聞いてくださいと言いたくなります。

From: 「成果主義は失敗だった」と企業は明言せよ:NBonline(日経ビジネス オンライン)

と言ってる。こういう本を出したのだから
しょうがないと思うのだが…
オススメ度は★4つです。
知っておいて損はないです。

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感想メモ:頭のいい段取りの技術

頭のいい段取りの技術
頭のいい段取りの技術
  • 発売元: 日本実業出版社
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2007/12/20

★★★★☆

「段取りはサービス精神である」
「その根底にあるのは、絶対に成功させるという決意である」
なるほど。付け加えるなら「失敗を極度に嫌うプライド」か。

 ということで、常人にはマネできないほどの熱意で効率化を追求してきた著者が、効率化の精神やノウハウを紹介している。効率化のためのlifehack集として読むこともできるし、仕事やプライベートで的確に求められるアウトプットを出すヒント集としても読める。内容をざっと書くと以下のようになる。

  • ゴールを明確に設定する
  • 時間には余裕を持たせる
  • 文章やプレゼンではまずポイントを示す
  • トラブル回避のため事前の確認を徹底する
  • 複雑な工程は最も足が長いものを中心に据える(クリティカルパス)

 書かれている全てのことを実行するのは不可能だ(著者は家族旅行の下見に現地まで車で行ったとのこと)。従って、自分に合いそうなものをピックアップし、試してみることになる。ちなみに、私は「なるほど、試してみよう」と思うものが多かったので★4つ。

 ちなみに本書はdankogai氏が「1分で読了した」と言いつつ激賞している。買ってもらうためには褒めるのが最良の策なのはわかるが・・・


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感想メモ:スティーブ・ジョブズ-偶像復活

スティーブ・ジョブズ-偶像復活
スティーブ・ジョブズ-偶像復活
  • 発売元: 東洋経済新報社
  • 価格: ¥ 2,310
  • 発売日: 2005/11/05

★★★★☆

 Appleの創始者にしてAppleを一度クビになり、NeXT、Pixerの経営者を経てAppleに帰ってきたカリスマ。技術とデザインに長けた天才的な経営者、というイメージが彼にはある。しかし彼の内面はもっと複雑であるということが、この本を読んでわかった。

 彼の周囲の人を巻き込むカリスマ性を持つ一方で、自分と意見が合わない者なら、長年会社を支えてきた部下に対してすら、かなり厳しい、むしろ人の血が通っていないかのような仕打ちをしたりする。人を惹きつける魅力はあるのだろうが、彼の下で働くのは相当つらそうだ。

 彼のプレゼンテーションの才能は、掛け値なしに天性のものだ。一方、技術については、彼はさほど精通している訳ではないようだ。デザインに対するこだわりは尋常ではなく、それはしばしば技術的な限界を超えた要求となって現れ、結果として設計ミスの製品となって現れる。最近はかなりヒットが多いが、以前は売れないものを作っていたのだ。

 にしても、コンピューター、アニメ、音楽と3つの分野で大ヒットを飛ばした彼の業績というのは掛け値なしにすばらしいものだ。Appleに興味がある人は面白く読めると思う。ただし、長いので読むのに時間がかかるのが難点。


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