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感想メモ:田中義剛の足し算経営革命

田中義剛の足し算経営革命-北海道発 大ヒットの法則! (ソニー・マガジンズ新書)
田中義剛の足し算経営革命-北海道発 大ヒットの法則! (ソニー・マガジンズ新書)
  • 発売元: ソニー・マガジンズ
  • 価格: ¥ 819
  • 発売日: 2008/06/14

★★★★☆

田中義剛を見直した

 生キャラメル、ホエー豚などヒットを連発する花畑牧場。
その経営者が田中義剛だということを、スイーツと豚にうとい私は全く知らなかった。
田中義剛が牧場長をつとめる北海道・十勝【花畑牧場】

 しかしこの本を読んで、ただタレントが知名度だけを活かして
やっている類いのものとは根本的に違うことがわかった。
15年の赤字経営を経ており、ここに至るまでの道のりは
決して平坦ではなかったそうだ。

 方針は以下のようなものである。

  • 中小企業が戦うには、価格競争に巻き込まれないよう高利益率を保つためブランドの確立を重視する
  • その際に田中義剛という名前は極力出さないようにする(タレントが片手間でやっているという印象を避けるため)

 非常にまっとうである。

 今後は疲弊した日本の農業のあり方を変える
提案をしていきたい、と田中義剛の志は高い。
農協の閉鎖性とかは微妙だと思っているので、ぜひ風穴をあけてもらいたい。

 あまり期待していなかったのだが、おもしろかった。★4つ。

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感想メモ:ウィニング 勝利の経営

ウィニング 勝利の経営
ウィニング 勝利の経営
  • 発売元: 日本経済新聞社
  • 価格: ¥ 2,100
  • 発売日: 2005/09/13

★★★★☆

名経営者として名高いGE元CEOのジャック・ウェルチ。
彼が語る、経営の考え方、ノウハウなど、仕事に関する様々な経験談。

その中身は、ミッションステートメントから人材採用、
人事評価、予算策定、ライフワークバランスと幅広い。
紹介されている考え方は、オーソドックスなものが多い。
しかし、それを現実に実行できるところは極めて少ないだろう。

まず、どの会社にも決めているだろう、ミッションステートメントや価値観について。
あるにはあるものの、浸透してはいないケースが多いものだろう。

効果的なミッションステートメントは、基本的に
次の問いかけに回答を与えるものである。
「私たちはこのビジネスでどうやって勝とうとしているのか」

バリューというのは単に行動規範のことだ。
具体的で、詳細にわたって、明確に記述されており、
想像の余地のないものだ。

次に「率直さ」について。

私は常に率直であれ、言うべきことを言おうと主張してきた。
(中略)それがいかに稀なものか、見誤っていたことに気づいた。

本音で話さない方が楽だから、心に思ったそのままを話すべきでないと、
人は思うようになる。

「意を酌む」「出る杭は打たれる」文化の日本ではなおさらだろう。
アメリカでも会社内での率直さは欠けているのだな、と思ってみたり。
では、どうやって率直にモノを言う雰囲気にできるのだろう?

率直さを引き出すためには、報酬を与え、褒め、語り続けることだ。
だが、実に単純なことだ。率直であればごちゃごちゃせずにすむから、
うまくいくのだ。

つまり、信じたものがバカを見ないように、トップが執拗に繰り返し発言、
行動していくのだろう。ウェルチがやったように。

ウェルチと言えば、「20-70-10」で有名な「選別」についても触れられている。
トップ20%はスターとして報酬などを特別扱いし、モチベーションとする。
そして、パフォーマンスが下の10%の人には、辞めてもらう方が
本人の将来のためにもなる、という考え方。
人には向き不向きがあるので、考え方としては納得できる。
しかし、実行することを考えると、とても難しいことだろう(特に日本では)。

ウェルチが考える人材採用の際のチェック指標も紹介されている。

・4つのE(と1つのP)のフレームワーク
Energy、Energize、Edge、Execute(Passion)

「情熱」という言葉を見るたびにいつも思うのだが、
情熱というのは後天的に得られるものなのだろうか?

予算の決め方というのも、不思議なものの一つ。
年度末の予算消化とか、事業仕訳どころではないムダが潜んでいる気がする。
アレがなくなれば、多くの組織の予算は10%以上減らせるのではないだろうか。

「予算を消化した実績で、次の年の予算が決まる」
「予算を余らせると怒られる」
というのはいつも納得しかねる。

一方、ウェルチが作ったGEでの予算の決め方は根本的に異なる。おもしろい。

個人そして事業部に対する報酬は予算の数字とは関連付けされない。
前年の業績あるいは競合相手の業績と比較して検討され、
現実的な戦略機会と障壁を考慮に入れて考えられる。

つまり、自分たちで目標をセットするのではないのだ。
ただ、最後の「考慮して」をきちんと行うことができないと
納得感はなくなるだろう。

この方針の転換は、根付くまでに数年を要したそうだ。
しかし、できるだけ低い目標をセットしようとする努力、
その目標をできるだけ上げようとする努力をなくせるのならば、
取り組む価値はある。

会社組織で働く人ならば、読んで気づくことは多いだろう。
これから就職する人も読んでおくとよい本。
すぐにはわからなくても、いずれ「このことか!」と思う日が来るはず。

さすがウェルチ、と思わされた。
オススメ度は★4つ。良い本です。

ウィニング 勝利の経営
ウィニング 勝利の経営
  • 発売元: 日本経済新聞社
  • 価格: ¥ 2,100
  • 発売日: 2005/09/13

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感想メモ:成功者の告白

成功者の告白―5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語 (講談社プラスアルファ文庫)
成功者の告白―5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語 (講談社プラスアルファ文庫)
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 820
  • 発売日: 2006/09

★★★★★

 起業するとはどういうことなのだろう?
どんな生活になるのだろう?
うまくいくときは?うまくいかないときは?
陥りがちな罠は?それを回避する方法は?

 こういったノウハウを、起業から企業を軌道に乗せるまでの5年間に
起こることが多いシナリオを物語形式で説明する、神田昌典氏の著作。

 神田昌典氏といえば、今をときめくビジネスの成功者として
知られているが、その道のりは平坦ではなかったそうだ。
「地雷」は、特にプライベートで数多く起きたという。

 本書は、神田氏の身に実際に降りかかった事件を含め、
複数の実話を元に構成されているという。
例えば、仕事と子供の重病。ポストに残された離婚届。
社員が次々とストレスから病気に。
フィクションとはいえ、その内容は重い。

 神田氏は、ビジネスと家庭とのバランスが重要と説く。
ビジネスの成功者が、家庭に問題が山積みであるケースも少なくないとも。

 久しぶりに、読み始めたら止まらない本だった。
仕事をしている人であれば、誰しも考えさせられる部分があるのではないか。
良著。★5つ。

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感想メモ:2010年日本の経営

2010年日本の経営―ビジョナリー・エクセレンスへの地図 (未来創発2010)
2010年日本の経営―ビジョナリー・エクセレンスへの地図 (未来創発2010)
  • 発売元: 東洋経済新報社
  • 価格: ¥ 1,785
  • 発売日: 2006/11

★★★☆☆

NRIによる2010年代に求められる企業経営像の提言

その内容は

「理念・ビジョンを、非正規社員を含む多様化する人材に浸透させ、
組織へのコミットメントを高める」

というもの。
どの企業も行おうとしているような、非常に正攻法なものである。
裏を返せば、いかにそれが形骸化し実現できていないか、
ということでもある。

本書では、この目標を実現するために、
どのようなステップを踏むとよいかを説明しているが、疑問は単純に、
「できるの?」
である。

言うは易し、行うは難し。
「いいことだとは思ってやってみたけど根付きませんでした」
というケースがいかに多いことか。

結局、「何で必要なの必要なの?」と従業員全員が納得しないと、
根付かないだろう。

他に印象に残ったこと。

Q:今の仕事にやりがいを感じている理由
管理職以外の従業員:38%
管理職のトップ:仕事内容がやりたいことに近い37%
役員のトップ:給与水準27%

…あれ?

主張そのものには賛成なのだが、ケースバイケースであることが
多いのではないかと思う。★3つ。

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感想メモ:挑戦する経営―千本倖生の起業哲学

挑戦する経営―千本倖生の起業哲学
挑戦する経営―千本倖生の起業哲学
  • 発売元: 経済界
  • 価格: ¥ 1,600
  • 発売日: 2008/10

★★★★★

 携帯・通信事業という規制産業に風穴を開けた、
イー・アクセス、イー・モバイルを創業したベンチャー経営者の雄、千本氏。
ストーリーは時系列に沿い、時の情勢と氏の考えや行動を交えて綴られている。
という形式自体は一般的だが、氏の熱い思いと共に語られるストーリーは
躍動感があり、飽きが来ない。

 イー・アクセス、イー・モバイル両事業とも
「千本氏だからこそできた」ことが多いことに驚かされる。
特にゴールドマン・サックス、モルガンスタンレーからの資金調達など、
同じことができる人間が果たしてどれだけいるのか。

 また、氏のマネジメントについての考え方も、
一般のマネジメントの考え方とは異なり、かなりアグレッシブである。
その考え方は以下の部分に集約されている。

  • マネジメントとは「そのままにしておいたら危機的な事態に際して、隘路を探して成功に導くこと」
  • 九割失敗しても、残る一割で断崖絶壁を縫うようにして次のフェーズを切り開く
  • トップが九割の失敗に絶望した瞬間に企業は坂道を転げ落ちる

(P282)

 ベンチャー企業を立ち上げる経営者というのは、
こういう思いを持たなければならないものなのか。

 松下幸之助、京セラ稲盛会長などの名経営者も登場するが、
彼らの言葉の重なりも興味深い。

  • 「成功とは成功するまで続けること」(松下幸之助)
  • 「始めたらやめるな。筋のいい事業だと信じたら、
    石にかじりついてでもやり抜く。」(京セラ稲盛会長)

 千本氏もそうだが、彼らの考え方の根本にあるのは、
強い「信念」ではないかと感じた。

 通信事業についての知識を得ることもできるし、
純粋に読み物としてもおもしろい。★5つ。

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感想メモ:コークの味は国ごとに違うべきか

コークの味は国ごとに違うべきか
コークの味は国ごとに違うべきか
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 2,000
  • 発売日: 2009/04/23

★★★★☆

The World is not flat

 The world is flat(フラット化した社会)は、
トーマス・フリードマンによる「テクノロジーにより
国境を越えた社会のつながりが広がっていること」を示す言葉。

 一方本書の著者ゲマワットHBS教授は、
世界はまだグローバル化しておらず、
セミ・グローバライゼーションの段階に留まっている。
そして数十年はこのセミ・グローバライゼーションの状態が続くと述べる。
つまり、本書の内容を一言でいうと「The world is not flat」だ。

 実際に社会を見てみると、グローバル化は限定的なものである。
GDPに対する貿易の額は、アメリカでも10%程度というのが
クルーグマン教授の示すことだし、本書でも「ほぼ10%」という見方が
示されている。

 なぜか。

 隔たりがあるからである。
その隔たりを、本書では4種類に分類している
CAGE(Caltural,Administrative,Geographical,Economic)。
こういった隔たりを考慮せずにただ「グローバル化」と息巻いても
うまくいきませんよ、というのが本書の主張だ。

 ではどうすればいいか、に関しては詳細に書かれているので読んで欲しい。
タイトルにある通り「コークの味は国ごとに違うべきか」という点については、
「Yes」という答えになるのだろう。
世界はグローバル化しているのだから、同じ商品同じ広告同じ戦略で行けばOK、
なんて話はないということだ。

 
 内容はすばらしいが、マジメに読むとかなり時間がかかる。
私も、世界はまだ大部分がflatではないと思った。★4つ。

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感想メモ:名経営者が、なぜ失敗するのか?

名経営者が、なぜ失敗するのか?
名経営者が、なぜ失敗するのか?
  • 発売元: 日経BP社
  • 価格: ¥ 2,310
  • 発売日: 2004/06/24

★★★☆☆

経営者がバカだからじゃないよ、という本。(はしょりすぎ)

マジメな書評を求める人は、以下を参照されたい。

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感想メモ:虚妄の成果主義

虚妄の成果主義—日本型年功制復活のススメ
虚妄の成果主義—日本型年功制復活のススメ
  • 発売元: 日経BP社
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2004/01

★★★★☆

かなり旬は過ぎた感があるが、一応。

著者は高橋伸夫、東大経済学部教授。
バブル前後を含め、数十年経済学界に身を置いてきた著者の主張は簡潔だ。

「人は金で動くのではなく、金銭を仕事の動機付けにするのは間違いである。
『お金は年功主義で保証し、仕事で報いる』という日本型年功主義を見直そう」

というもの。

このことを示す上で非常に興味深かったのは、ある実験例で、
被験者にパズルを4セット解かせるというもの。

2セット終わった所で自由時間を入れるのだが、
休憩時までに解いた数に対して報償を支払う場合(A)

報酬を支払わない場合(B)
で、自由時間の過ごし方に差が見られるというのである。
(ちなみに休憩時間は実験者は部屋から出て行き、周りに人はいない)

差というのは、
「片方が自由時間にパズルを解かず、休憩を取る割合が多い」
というのだが、
それは、休憩が多いのは報酬が支払われた(A)か?
と思うとそうではなく、なんと(B)の方なのである。

(A)の場合は「報酬のためにパズルを解く」事になるのに対し、
(B)の場合は「パズルを解くこと自体が楽しい」状態になるからなのだろう。
これは誰しも経験がある、
「同じことでもやらされるとたのしくなくなる」
というやつだろう。

人が最高のパフォーマンスを発揮するのは、
お金のためにがんばっているという状態ではなく、
「そのこと自体が好きであるため、いくらやっても苦にならない」
という状態なのだろう。

成果主義ではこういう状態になることの助けにならず、
むしろ年功制で生活に対する保障をした上で、
仕事の内容で報いる日本型年功主義の利点を
再確認することが必要なのだという。

金銭が全くモチベーションになることはない、
と言っているわけではないが、
弊害の方が多いですからやめた方がいいですね、という話だ。

人のパフォーマンスを上げる「動機付け」についての理解が深まる上、
日本型経営についても興味深い、良著でした。

日本で導入された成果主義は、成果主義の皮をかぶった
人件費削減であることが多いので、そこを切り分けてから
議論する必要があるような気もするが。

ちなみに2008年6月の著者のインタビューでは

2004年に出版した『虚妄の成果主義』(日経BP)が思いもよらずベストセラーになったことで成果主義に関する取材をいまだに受けますが、少々辟易しています。経営学者である私の専門は経営組織論や意思決定論で、人事労務問題が専門ではありませんから。もう成果主義ではなくて、専門の企業経営について聞いてくださいと言いたくなります。

From: 「成果主義は失敗だった」と企業は明言せよ:NBonline(日経ビジネス オンライン)

と言ってる。こういう本を出したのだから
しょうがないと思うのだが…
オススメ度は★4つです。
知っておいて損はないです。

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