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感想メモ:子どもが面白がる学校を創る

★★★★★

広島県の教育が変わっているそうだ。
公立初のイエナプラン教育校開校、
国際バカロレア認定校の開校、
商業高校での「ビジネス探究プログラム」導入
内申書をほぼなくした高校入試など、改革づくめ。

その中心にいるのが、教育委員長の平川理恵さん。
元リクルートのトップセールスウーマン、
米国に留学後に起業、その後神奈川の中学の
校長を経て、広島県の教育委員長。

民間、特にリクルート出身だからか、
平川さん個人の性質によるものなのか、
とにかく行動力がすごい。
役所の流儀を覆し、様々なプランを実行に移していく。

平川さんをスカウトした広島県湯﨑知事の
サポートもあってのことだろうが、
教育委員会のトップが変わると
ここまでできるものなのか。

教育改革の内容もそうだが、
改革のプロセスを知るのも興味深かった。
教育に関心がある人に、特にオススメ。

感想メモ:修身教授録

森 信三
致知出版社 1989-03-01
¥ 2,415

★★★★★

昔の日本人は、今の日本人が失いつつあるものを
持っていたように思う。
逆ももちろんあるのだろうが、失った部分ものの中に、
とても大事なものがあるような気がする。

それは、過去に日本を訪れた外人が、
驚きをもって本国へ伝えた言葉に含まれるようなもの。
それは、果たして現在にも言える言葉なのだろうか?

ふと考えてしまう。

その根底にあるのは日本文化の流れ。
それを伝えてきたものの一つが「修身(道徳)」という
科目であったように思う。

今の教育の現場で、どういった授業が
行われているのかは知らないが、
この「修身教授録」は、その中でも
特上のものであることは間違いない。

「人生二度なし」など、
襟元を正さざるを得ない言葉が並ぶ。

かく自分に対して必然的に与えられた事柄については、
ひとり好悪の感情をもって対しないのみか、
さらに一歩すすめて、これを「天命」として
謹んでお受けするといつことが大切だと思うのです。(p13)

平素自分が受けている恩恵については、
その程度が深いものほど、かえって容易に
気付きがたいのが常であります。(p25)

かくして人生の根本は、何よりもまず真の志を
打ち立てるところに始まるわけであります。(p54)

真に志が立ったら、自分に必要な一切の知識は、
自ら求めて止まないからであります。(p92)

われわれの人間生活は、その半ばはこれを読書に費やし、
他の半分は、かくして知り得たところを実践して、
それを現実の上に実現していくことだとも言えましょう。(p63)

人間の生涯を通じて実現せられる価値は、
その人が人生における自分の使命の意義を、
いかほど深く自覚して生きるか否かに
比例するとも言えましょう。(p91)

人間は自ら気付き、自ら克服した事柄のみが、
自己を形作る支柱となるのです。(p134)

われわれが気品のある人間になるためには、
何よりもまず根本のこころの曇りを
払うようにしなければならぬ…
しかしさらに大切なことは、慎独、
すなわち人間がただ一人いる場合にも、
深く己れを慎むということです(p332)

人間の性格上の問題としては、
自分の欠点を反省して、これを除くという努力が、
実はそのまま、長所を伸ばすということになるわけです(p351)

「一度しかない人生を、真剣に生きているか?」
と問われて、はい、と迷いなく言えるだろうか。

言葉というのは、発する人の全人格を通じてその重みを増す。
本も、もちろんすばらしいものだが、
講義の動画があれば、日本の教育にとって、
すばらしい財産になっただろうなぁ。

森 信三
致知出版社 1989-03-01
¥ 2,415

感想メモ:「最高の授業」を世界の果てまで届けよう

★★★★★

トップの教師による映像授業を、
優秀な先生の数が足りない途上国に持って行く。

アイデアとして思いつく人はいるかもしれないが、
実際に実行できる人が、一体何人いるだろうか?

行動すれば、事前に想定しなかったような、
様々な問題が起こる。
それでも、二十代の歳の若者たちが、
力を合わせて、ものすごい行動力で突破していく。

当然、楽しいだけではない。
恐怖も、プレッシャーもあるだろう。
それでも力強く乗り越えていく、
エネルギーはどこから来るのだろうか?

それは、こういうことなのだろう。

魂に一度ともった火は、消えることなく、
他の人の心にも明かりをともしていく。(p4)

心に火がついた人というのは、
勝手に進んでいける。止まれない。

そしてその「心に火を付けるもの」に出会うには、
待っているのではなく、探し続けなければいけない。
って、スティーブ・ジョブズが言ってた。

読んでいるだけで、その熱が伝わってくる、
熱い本だった。オススメ!

感想メモ:教育者という生き方

★★★☆☆

教育に関わる10人の生涯をコンパクトにまとめた偉人伝。

ペスタロッチのメトーデ、
フレーベルによる幼稚園の開始、
教具を使ったモンテッソーリメソッドなど、
知らないことが多々あった。

彼ら全員に共通するのは、教育に対する情熱、熱意
順風満帆に進んで人生を終えた、という人はいない。

不運なできごと、周囲の反対などの逆境にあっても、
もがき、進み、最終的に乗り越えた結果が、
後世に残る偉業なのだろう。

「人は、思考の炎と発言の火花を用いて、
その目的への進路を切り開く」
「しかし、人は沈黙と行為を通じてのみ、
その進路を完遂し、自分自身を自分で完結する」(p41)
そして子ども同士の問題については、
自分が介入するのではなく、
子ども達で考え、解決させることにしました。
子どもたちの自主性や良心を信じ、
子どもたち自身で考え、解決させることにしました。(p76)
・子どもを育てる親の愛情で、子どもをしばりつけないこと。
・子どものときに民主主義的な考え方、自治の精神を身につけさせること。
・労働を尊び仕事を通じて、温かい人間関係をつくること。
・他人の人格を尊重できる人間に育てること。(p80)

教育に携わる人だけではなく、
子供がいる、またはこれからできるという人にも
オススメしたい本でした。


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感想メモ:私が「白熱教室」で学んだこと

★★★☆☆

知識と知恵は違う。

私の感覚では、知恵は知識の上位概念で、
知識を活かすのが知恵。

私が本書で提示したいのも、
まさにそうした「生き方を決める勉強」です。
迷ったときに自分がどうすべきか、
どう対処すべきかを決める
本質的な勉強の必要性なのです。(p43)

著者は、高校からアメリカのボーディングスクール(全寮制の学校)、
ハーバードビジネススクール、シリコンバレーのGoogle本社、
というものエリートコースをたどっている石角さん。

学校では、知識を教えることに偏ってしまいがち。
でも、アメリカのボーディングスクールやハーバードでは
知恵を教えていて、アメリカの教育の方がいいですよ、
と言っているように読めた。

それはその通りかもしれない。
ただ、日本人に生まれて、その環境を享受できる人は
残念ながら限られるように思う。

著者は自身のことを「普通の女の子」というように
語っているが、いわゆる普通の女の子は、
高校から単身でアメリカの学校に行くという選択は
難しいのではないか。

ご家庭の教育方針があるのだろうと思ったところ、
お父さんがアメリカのロースクールを出ていて、
国際弁護士をされている方だった。

「恵まれた家庭環境」と書いては元も子もないのはわかるが、
かといって「普通です」というのも、ちょっと首をかしげた。

ネットを使った学習は可能性を感じるが、
こういった知恵の学習までは難しそう。
どうすればよいのだろうか。

日本でも、藤原氏の活動など教育についての希望の動きがある。
感想メモ:つなげる力

教育は大事です。


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感想メモ:ハーバード白熱日本史教室

★★★★★

タイトルから「ハーバード白熱教室」の二番煎じ?と
想像される方がいるのも自然なことだろう。
しかしその予想は、いい意味で裏切られた。

著者は、1980年生まれの若さでありながら、
ハーバード大学で日本史を教えている、北川智子さん。
その講義は、学生からの絶大な支持を受けているそうだ。

しかし北川さんの大学での専攻は、数学と生命科学。
なんで?どうしてそうなった???

内容は、ハーバードで教鞭を取るに至ったストーリー、
ハーバードで教えている講義の内容、
ハーバードの講義のシステムなど。
北川さんが教える日本史も興味深いし、
本の構成もわかりやすい。

講義の内容については、本書を読んでもらうとして、
私の印象に残ったのは、北川さんの、講義に取り組む姿勢。
そして、人生に対するスタンスのようなもの。

必死すぎて、何をどう教えたかよく覚えていない。
とにかく知っていることをしゃべり、
学生の質問と興味の向く方向へ授業をもっていった。
楽しむことに徹した。(p41)
楽しむことを忘れたくなかった。
笑う余裕も忘れたくなかった。
このクラスのオリジナリティーは、
私という人間の面白さにあると信じて教室の演壇に立った。
その自信だけは絶対に失ってはいけないと、いつも誓った。(p50)

ハーバードで、世界一賢い学生たちに対して講義をするということは、
相当プレッシャーがかかることと予想される。
しかしそこに、悲壮感はない。
教えることの意義、使命感を、常に第一に置いているからなのだろう。

私は、日本という国が、世界に誇る文化や慣習を持つ、
素晴らしい国だと信じている。
しかし、経済の状況や中国の台頭などから、
世界の日本への注目度は下がってきている。

しかしそれは日本の価値が下がっているというよりも
プレゼンテーションの問題であり、
世界に貢献できる日本の価値はいっぱいある。

そんな中、ハーバードという世界の頭脳が集まる場所で
これだけの評価を受けつつ日本について教えるということは、
ものすごく価値がある。
これはもう、国としてバックアップすべきじゃないかしら?

予想以上にすばらしい本でした。オススメです。


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感想メモ:4年1組命の授業

NHK「こども」プロジェクト
日本放送出版協会 2003-09
¥ 1,260

★★★★☆

小学校の先生というのは、大学の先生のように、
高度な学問が求められるわけではない。
一方で、子供たちに与える影響の大きさは
大学の先生よりもはるかに大きい
だろう。

小学校で与えられるのは、知識というよりも、
価値観、社会のしくみ、他人との関わりかた、
そういった幅広いものだ。

子供は鋭い。大人の言うこと、することはすぐ吸収する。
それだけに、小学校の教師というのは、
性格を含めた人間性までもが問われる、
責任の重い職業なのだな
、という感想を持った。

父親を亡くした子供にどう接するか。
それ以外の生徒たちに、その子供とどう接して欲しいか。
そのことに対して、どう働きかけるのか。かけないのか。
あなたが教師なら、どうしますか?

金森先生の信念、覚悟には心を打たれた。
具体的なエピソードは書かないので、
ぜひ読んでみて欲しい本です。
オススメ度は★4つです。

NHK「こども」プロジェクト
日本放送出版協会 2003-09
¥ 1,260


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感想メモ:「やればできる!」の研究―能力を開花させるマインドセットの力

「やればできる!」の研究―能力を開花させるマインドセットの力
「やればできる!」の研究―能力を開花させるマインドセットの力
  • 著者: キャロル S.ドゥエック
  • 発売元: 草思社
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2008/10/27

★★★★☆

マインドセットとは、
「考え方の基準」
というような意味。

何を重要だと考えるか、
周りからのメッセージを
どう解釈するかを決める判断基準、
という感じ。

日頃自分がどういうマインドセットを
持っているかという意識はしないが、
日常考えていることが自分を形作るのだから、
マインドセットが人生を決める
といってもいいぐらい重要なものだ。

この本ではマインドセットを
ざっくり2つに分類している。

・こちこちマインドセット
内なる声は自分や他人の品定めばかり
するようになる。

・しなやかマインドセット
この体験から何を学びとることができるか。
どうすれば自分を向上させることができるか。

しかし子供は、ともすると
こちこちマインドセットに
なってしまいやすい。

自分は価値のある人間だ、
人から愛される人間だー
そう思えるのでなければ、
子どもは生きてゆけない。
だから、そのことに確信が持てない子どもは、
それを得るための短絡ルートを示してくれる、
こちこちマインドセットに頼るようになる。

ならば、
子供にしなやかマインドセットに育ってもらうには、
どうしたらいい
のだろう?

ポイントは、ほめ方にあるらしい。

この調査は知能検査の問題を用いて行っているので、
能力をほめると生徒の知能が下がり、
努力をほめると生徒の知能が上がった
ことになる。
頭の良さをほめると、
学習意欲が損なわれ、
ひいては成績も低下したのである。

つまり、
ほめるときは、子ども自身の特性をではなく、
努力して成しとげたことをほめるとよい

ということ。

自分のためになるのはもちろんだが、
すべての親、教師など子供に教える
機会を持つ人は、読んでみるときっと発見があるはず。
オススメ度は★4つです。いい本でした。

ほめ方については、
報酬主義をこえて
野口晴哉氏の叱り方褒め方 (1970年) (潜在意識教育シリーズ)がオススメです。

関連:


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感想メモ:子育てはお金の教育から

子育てはお金の教育から (PHP文庫)
子育てはお金の教育から (PHP文庫)
  • 著者:邱 永漢
  • 発売元: PHP研究所
  • 発売日: 1989/09

★★★☆☆

日本人は一般的に、お金のことについて話すのを、
品がないという風にみなす傾向にある。

とはいえ、生きている限りお金のことはついて回るのだから、
子供にしっかりとお金のことを教えるのは、
親としての責務であるような気がする。

この本は、ビジネスのエキスパートである邱 永漢氏の
教育方針が語られている。内容はお金のことに限らない。
さすが、実用的な教育方針で、自分が実行できるかはさておき、
なるほどなぁ、と考えさせられることが多い。

基本的に、自分が持っている以上のことは教えられない、
という制約が、親による教育の限界である気がする。
まず、お前ががんばれよ、ということでしょうな。
軽く読める本で、参考になりました。
オススメ度は★3つです。

目次
1章 なぜ今、お金の教育が必要か―お金に裏切られる親子関係

2章 バカにされないお金の貯め方使い方―親である自分は大丈夫か

3章 子は親の首かせ財布貸せ―息子の「金銭感覚」とどう対決するか

4章 学歴に負けない生き方―学校は「お金」を教えない

5章 お金からの自立をどうやるか―しっかり者の子供に育てよ

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感想メモ:赤ちゃんの運動能力をどう優秀にするか

赤ちゃんの運動能力をどう優秀にするか―誕生から6歳まで (More gentle revolution)
赤ちゃんの運動能力をどう優秀にするか―誕生から6歳まで (More gentle revolution)
  • 発売元: ドーマン研究所
  • レーベル: ドーマン研究所
  • 発売日: 2000/03

★★★☆☆

子供が0歳から6歳までの各段階で、どんな能力を獲得していくのか。
その際にどんな運動をするとその助けになるのか、プログラムとしてまとめて紹介している。

日常ではあまりやらない動きが多いが、これらを行うことで、
より早く運動能力を得られるようになるとのこと。

何ヶ月で何ができるようになった、
という数字自体には意味があるわけではないだろう。
しかし、周りの子供たちと比べて、
早く物事ができるようになるということは、
自信がつくという点では意味があるように思う。

例えば、プロスポーツ選手には4月生まれが多い。
これは、成長が早いということもあるだろうが、
それによって与えられる機会が増えるということもまた、
大きな要因であるようなのだ。
(参考:「天才! 成功する人々の法則」)

洋書なので、対象は日本人の子供ではない。
まぁ、外人の子供と日本人の子供がどの程度作りが違うのかは
今ひとつわからないが、結構違う気はする。
おもしろかった。オススメ度は★3つです。

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