感想メモ:千住家の教育白書

★★★★★

千住博、千住明、千住真理子。

芸術家一家の教育方針について語られた本なのかな、
と思って手に取ったのだが、良い意味で大幅に裏切られた。
この本は、ある家族の人々の、この上なく濃厚で壮絶な、
生と死の様子を綴る人生の物語の本だった。

確かに、教育方針について語られている部分はある。
言葉にすると簡潔。しかし実行はとても難しい。

問題は子供がいかに興味を持つかということ、
それに対して何パーセントの集中力をもって
突進するかということ。(p79)
一番好きなことをやらせるのが、一番伸びるのだよ。
興味をもって集中させること以外に、
子供を伸ばす方法はない。(p86)

このあたりを読んで感じたのは、
野口晴哉氏が語ることと同じだということ。

自発性。

これがキーワードであるようだ。
そして、これは決して子供だけの話ではなく、
他人に対してだけのことでもない。

もう一点も、非常に難しい話。

そこで得た結論とは、自分を無にしてかかることだった。
親は自分自身の期待を子供にかけてはいけない。
それは親のエゴイズムにほかならない。(p80)
私利私欲のすべてを捨てて、
子供と接しなければならない。
それでは親はかわいそうかというと、そうじゃない。
子供が賢く育ったら、うれしいことなんだ、と思う。
報いのない愛、献身の愛、神に近い愛、
これは自分自身が修練し、自分を磨くことにかかっている。
結局、子育ては、自分自身の問題といえるのだろう。(p80)

しかしこのことを、この両親はやってのけたのだと思う。
それは、次の言葉からもわかる。

「僕は生まれてきてよかった」(p188)

ここまで言うことができるだけの努力。
限界までの努力が必要とされる道を選び、
体力の限界まで自分を追い込む生活を何年も続けること。

それをそんな茨の道を行く我が子の選択を心から信じ、
全身全霊をもって支え続けること。

父、母、子。
千住家の人々、いずれの中にも非凡さを見た。
それは、その家庭の中で生きてきたからこそ、
得られたものなのだ。

オススメ度は★5つです。
全ての人にオススメですが、
子供を持つ方には、特にぜひ読んで欲しい本です。

Hiroshi Senju
千住 明公式ウェブサイト
千住真理子 オフィシャルサイト


その他の書評などはこちら。
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