感想メモ:走る哲学

為末 大
扶桑社 2012-07-12
¥ 819

★★★★☆

為末氏がTVで話しているのを見るたびに、
ああ、頭のいい人だなぁ、と感じていた。
この本を読み、その感覚は一層濃いものになった。

本の構成は、twitterでの為末氏の発言のまとめ+α。
読んでいなかった、興味のあるトピックと出会える
チャンスが得られて、ありがたかった。

僕はずっとモチベーションが高いと思われているけど、
そうじゃなくて壊れないように大事にしているだけ。
自分の本当の感情を無視してやる気を自分に押し付け続ければ心が壊れる。
どこまでなら我慢できて、何を楽しんでいるか。
このコツを掴むのがやる気で居続けられるコツで、それは自己観察しかない。(p17)
再現性を持たせようとする段階がいわば積み重ねで、
いい感じを探るという段階が遊びという事もできる。
反復練習しかしない選手が伸び止まるのは、再現性が高くても、
次のレベルにはみ出る手法を持たないから。
遊ばないと予想外のいい感じが出なくて、
それが出ないと人はそこに留まる。(p23)
日本社会の苦しさは、やめる事がそもそも
前提に置かれていない社会の仕組みにあると思う。
みんな同じだから、ひとりやめるのは怖い。
逃げるな耐えろと教育されて、いざ社会に出てから
さあ自己責任でどうぞと言われても無理だと思う。
耐え方は習ってもやめ方を習わない。(p42)
子どもを勝負弱くさせるのは簡単。
失敗したらおしまいだよと言い続ける事。
そうすれば失敗を恐れ、挑戦を恐れ、
評価を気にするようになり、縮こまる。
怖いのは口にしなくても、親や周囲が心の奥で
そう思っていたら子どもには伝わっているという事。(p52)

おもしろいのは、どれも陸上の話に留まらないこと。
頷かされる言葉が多い。
まさに「一芸は万芸に通ず」。

最後は、人生についての言葉。
この本から感じた日本への課題と問題意識が、
こういった形となったのかなと合点が行った。
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期待もされる。評価もされる。
それが社会の仕組みならその中で生きて行くしかない。
でも大事なものを忘れないように。
自分は一体何になりたかったのか。
誰が何と言おうとあなたはなりたいものになっていい。(p220)

多くのトップアスリートとは異なり、
彼の場合は引退後の活躍の方が
より大きなものとなりそうな気配がする。

為末 大
扶桑社 2012-07-12
¥ 819


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