マリー・フランス・イルゴイエンヌ /高野優 / 紀伊国屋書店 / 1999年12月
★★
最近、モラル・ハラスメントという現象に興味を持っています。
この本は、フランスで大ヒットして、職場や家庭におけるモラル・ハラスメント(精神的ないじめ)問題を顕在化させる役割を果たしたのだそうです。この本のヒットによって、モラル・ハラスメントという言葉は市民権を得て、2002年以降、フランスやベルギーではセクシャルハラスメントと同じく職場において禁止事項となるに至ったそうです。
星の数が少ないのは、この本は読み物としては構成に難があり、読みづらいと感じたためです。しかし、現在モラル・ハラスメントの被害に遭っている方からすると、思い当たる節が多すぎて、ショックを受けつつ休み休み読み通し、読み終わる頃には、自分がモラル・ハラスメントの被害者であったと気づいて愕然とするようです。
モラル・ハラスメントとは何か、ということは、たとえばこちらのサイトをご覧になると、ご自分なりのイメージをつかんでいただけると思います。日本では夫から妻へのモラル・ハラスメントの事例が多く、典型的なタイプとしては、
- 外面(そとづら)が良く、結婚前にその性格を見抜くことは困難。結婚後に本性を発揮する。
- 同一傾向の性格の両親など、問題のある家族を持っていることが多い。
- 独自の「マイルール」があり、自分に甘く、妻や子に厳しい。例えば「オレは趣味に散財していいが、お前は100円ショップでタワシを買っても無駄遣い」「オレは男だから浮気していいが、お前は女だからダメ」など。
- 被害者に罪悪感を持たせることで、加害者への批判を退ける。マヨネーズの買い置きを忘れたくらいの些細なことを、「お前は何も感じないのか」などと被害者の過失として激怒し、「怒らせるお前が悪い」と言って、怒りを正当化する。
- 自分の正しさを揺ぎなく確信しており、下に見ている被害者とは話し合いにならない。またカウンセリングその他の矯正プログラムによって、矯正されない。
- 被害者の唯一の対抗手段は離婚で、離婚を切り出しても容易には応じず、鬱病を詐病し始めたりする。
- 子供がいて離婚せずにいると、その行動様式を子が模倣して、モラ(モラハラをする人)に育つ。
明らかに理不尽なケースを話されているにも関わらず、そのように答える人も、面倒臭いから誠意のある回答をしないのか、あるいは自分が似たような理不尽を経験しているから、特に問題だと思わないのか、本当に普遍的なことだと認識しているのか・・・?
モラル・ハラスメントは、ちょうどセクシャル・ハラスメントのように、問題を定義した言葉が多くの人に認知されると、被害に遭っていない人にも、被害の様子を理解してもらえるようになると思われます。そのうちきっと、ドラマになるんだろうなーと思っています。