Part 1 エネルギー問題と現状

エネルギー問題 Part 1


1.1 エネルギーってなに?

私達は日頃なにげなく生活している中でも、エネルギーを使っています。 通常私達がエネルギーを使うのは、電力や熱という形です。 照明、テレビ、エアコン、炊飯器、電子レンジ、洗濯機。パッと見ただけでも、 多くのものがエネルギーを使っていることがわかります。 また電気製品でなくても、製品を作る時や処分する時にもエネルギーを使います。 例えばアルミニウムは作るときに大量の電力を消費することが知られています。

私達は意識せずとも常にエネルギーを消費しながら生活していて、エネルギーを使うことなしに生きることはできないのです。 にもかかわらず、最近のエネルギー消費の増加は著しいものがあります。 20世紀後半の50年だけで、それまでの500年間と同じ量のエネルギーを使っているのです。

私達は、少し前までエネルギーは無限にあるものだと考えていました。 石油や石炭は掘ればいくらでも出てくる、と。 しかし、石油は数十年のうちに尽きると言われています。 石炭も石油より多いですが、これらの化石燃料は確実に有限なのです。 このままのエネルギーの使い方を続けていけば、 いずれ資源は底をつくことでしょう。

また、その石油や石炭など化石燃料は、使用することによってCO2などの温室効果ガスが排出されます。 このことから1997年12月に京都で開かれた国連気候変動枠組条約第三回締約国会議(COP3)において、 先進国諸国がCO2排出量を削減することで同意しました。 日本も2010年にCO2排出量を1990年レベルよりも6%削減することが義務付けられています。 温暖化を考えるならば、CO2に限らず温暖化ガスの排出が少ないエネルギー、 つまりグリーンエネルギーの導入を急ぐことが必要でしょう。
エネルギー問題は、環境問題とも密接な関係があるのです。

このような背景から、今エネルギーのありかたについて大きな変化が訪れつつあります。 はじめに書いたようにエネルギーというのは私達生活者にとっても身近なものであり、 それだけに私達一般生活者の選択の積み重ねが社会に大きな影響を及ぼすことになるのです。 しかし選択をするためには、正しい知識を身につけていることが必要となります。 このページははその知識を得る助けになれば、という考えのもとに作成されています。

1.2 日本のエネルギーの現在

98年度の日本のエネルギー源の構成比は、「石油52.4%、石炭16.4%、原子力13.7%の順」(*1) となります。 石油は枯渇の問題がありながらも、未だ安価なエネルギー源であり依然として主力です。 またここ数年伸びてきているのが原子力発電ですが、これは後述するように時代に沿わない動きと言えます。
さて、日本は2010年までにCO2の排出量を1990年レベルから6%削減を義務付けられました。

では日本はどのような対策を取ろうとしているのでしょうか?
政府の答えは「原子力発電所の約二十基増設」でした。 しかし、このことは本当に問題の解決になっているのでしょうか?さらに言えば、 原子力発電は果たして未来に残すにふさわしいものなのでしょうか。

1.3 原子力発電推進政策とその問題点

原子力発電は、ウランやプルトニウムの核分裂の反応熱を用いて発電するものです。 そして政府は「原子力発電はCO2を排出しない、クリーンなエネルギー」と言っています。 しかし実際はどうでしょう。
(軽く読む方は、飛ばして次の項へどうぞ)

原発は発電効率が悪く(35%程度)、さらに放射能を含む温水によって熱を放出するので廃熱の利用もできません。 また都市から離れたところにあるために送電のロスがあること、一度運転を始めると簡単に止められないことも問題です。

放射性廃棄物の問題もあります。放射能が半減するのに数万年もかかる廃棄物の処理方法はと言うと、 分厚いコンクリートで囲み地中深くに埋めるというもので、 しかもまだ最終処分地の場所すら決まっていないものが多いというのが現状です。 未来数万年に渡って有害な放射能をまき散らす物質をつくり出すことのどこが「クリーン」と言えるのでしょうか。

そして、相次ぐ重大な事故の問題です。 97年3月の東海村動燃の事故では37人が体内被爆という大事故でした。 この事件では、他にも虚偽の報告が明るみに出たことなどが原子力に対する不信をつのらせました。 そして、あの99年9月のJCO東海村では、ついに被害者に死者が出るに至ったのです。
実際には、事故が起きていない通常運転時にも放射能は放出されています。 原発周辺の住民のガン死亡者の構成比は、日本の標準とは異なり甲状腺などのガンが多くなっています。 そしてこれは、チェルノブイリの事故後の状況と同じなのです。

すでに欧米諸国は、脱原子力の方向に向かっています。 原子力推進派だったフランスでさえ「2010年まで新規原発の発注を凍結し、 省エネと再生可能エネルギーを促進するなど、新しい路線へ転換しはじめた」(*2)のです。 にもかかわらず、「日本の原子力産業界は国内での原発新設が進まない現状で、政府援助のもとに、アジア諸国に対する原子力発電プラント輸出に躍起」(*3)です。 これに対して台湾、韓国をはじめとするアジア諸国は原発反対の方向に向かおうとしています。

1.4 目指すべき方向

このように、原発はCO2を削減することはできても、それ以上に環境に悪影響を及ぼすものです。 にもかかわらず、国は「原発増設やむなし」の方向へ世論を導こうとしています。 このことが既に時代の流れに逆らうものなのは、明らかでしょう。
本当は国も原発が積極的に推進できるものでないとは分かっているのです。 これは「原発か、禁欲か」と言った雰囲気を作り出そうとしていることからもわかります。 本当に望ましいものならば、「原発しかない」と言えばいいのですから。

しかしもし原発よりもコストが低く、環境へ与える影響も少ない選択肢が出てくればどうでしょう。 その時点で「やむなし」とは言えなくなります。 そして消費者がそちらを選択をすれば、原発は問題が多すぎるために撤退せざるを得なくなります。
そもそも「原発か、禁欲か」という二者択一がおかしいのです。 「豊かさを保ちつつ、持続可能な範囲でエネルギーを効率良く利用する」 という第三の選択肢を探っていくべきでしょう。 (もちろんこのことはムダ使いをしてもいい、ということではありません)

次はそのための技術について説明していきます。

Part 2 省エネのための技術