肥満とダイエットの遺伝学

肥満とダイエットの遺伝学

蒲原聖可 / 朝日新聞社 / 1999年8月

★★★★★


人類はだんだん丸くなっている。人格ではなく体型の話だ。

 1999年刊のため、今更感のあるご紹介ですが、広範囲な話題をカバーしており、新しい発見も多い良い啓蒙書だと思います。こうした学術論文をベースとした定説とトレンドをまともに紹介してくれる本は、もっと増えてくれるといいなあと思います。

 面白いなと思ったことはいろいろありますが、


  • あるアンケートで20代の日本人女性の6割以上が、痩せることのみで幸せな気分になると回答している。
  • ヒトが年間で摂取するカロリーに占める体重増減に寄与するカロリーは、微々たるもの(1パーセント以下)であり、食事療法その他で体重をコントロールするのは困難。
  • 体重は環境要因より、遺伝要因の寄与する割合が高い。一定の値に収束するよう、複数の遺伝子が加齢その他の環境要因に対応して発現してコントロールしている(セットポイント説)。
  • セットポイント周辺での体重の維持に関与する重要な物質のひとつに、脂肪細胞から分泌されるレプチンがある。体脂肪が増えるとレプチン濃度が増して、食欲が抑制され、エネルギー消費が増大する(痩せる)。レプチン合成に異常があると太るが、これが肥満の原因である人は少ない。太っている人の多くは、レプチンが受容される脳脊髄液の濃度が相対的に低く、機構は不明だがレプチンの輸送や受容以降の伝達に問題があるせいではないかと言われている。

 要するに、体重は遺伝子が決めています、と言っていますが、どういう決め方をしているんでしょうね。
 体重が100キロで安定している人は、遺伝子にキミは100キロ!と書いてあるとも思えないですし、期間は? 触れ幅は?

 人間の体は、短期・長期のカロリー収支の変動を緩衝して、体重を一定値に収束させる仕組がよく出来ているので、ダイエットは難しい、というのは確かにその通りなのですが、現実には摂取カロリー、筋肉量(基礎代謝量)、運動量のバランスを大きく変えて維持できれば、減量は可能なんですよね。

 しかしそれを容易に実現するためにも、肥満のしくみがもっと物質的に解明されると面白いと思います。

この記事について

このページは、ruruが2006年10月13日 07:32に書いた記事です。

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