追悼企画:丘乗夫(仮名)2

第1回の続き


岡:あと、これは自分で丘に行くようになってから気付いたんですけど、 丘って広いんですよね。 海の方が圧倒的に広いような印象がありますけど、海岸線はあくまで線なんです。 ところが丘は線じゃない。面、つまり一次元ではなくて二次元なんですね。 この自由度が丘の魅力でもあり、難しいところでもありますね。

-一次元と二次元。高さも入れると三次元。

岡:高さは・・・。 まぁ、ですから、水サーフィンと丘サーフィンとで、 見かけは似ていても中身が全然違う。 で、ノリの丘についてのそんな話を聞いていると、 おもしろくてどんどん興味が湧いてきました。

-その後の丘さんとの付き合いは。

岡:その後しばらく間が空くんです。 ただ、ノリの方はその頃から世間に出始めていたので、彼の動きは耳に入ってきていました。 丘サーファーとして活動する一方で、ノリがフィールドを丘→山→活火山へと広げて行ったのはご存知の通りです。 彼自身、マグマのような熱さを持った男でしたから、 火山と聞いてもあまり違和感は感じなかったですね。 「ああ、なるほど」という感じ。 とは言え、「キラウエアの溶岩焼き」のときは、 コイツは本物(のバカ)だと思いましたけどね(笑)

-マグマに乗ろうとしてキラウエア火山を訪れ、全身にひどい火傷を負ってしまった。 「キラウエアの溶岩焼き事件」は、丘サーファーにとって伝説ですね。

岡:僕が丘サーファーに本腰を入れ出したのも、あれがきっかけでしたから。 ちなみにノリは、ネットサーフィンも少しトライしていたらしいのですが、 体を動かさないものはダメだったみたいで、すぐやめてしまったみたいです。 携帯電話も持たなかったですし、そっち系は苦手だったようですね。

-さすがの丘さんも、情報化の波には乗り損ねた(笑)

岡:はい(笑)体育会系なんですね。 そんな感じで、僕も丘に入り始めました。5年前くらいですね。 僕もノリに追いつきたい一心で頑張ったのですが、 ちょっと近づいたかと思うと、ノリはものすごいスピードで別の方へ突き進んでいる。 おととし頃ですかね、ノリが熱心にビデオを見ているので何かなと思ったら、 プロ野球なんです。 他のスポーツからヒントを得ようとしているのかと思ったら、 どうも野球は見ていない。観客席ばっかり見てるんです。

-もしかして・・・

岡:そうなんです。応援席のウェーブを、何回も巻き戻しながら一生懸命見てる。 コイツは一体どこに行きたいんだろう?と思いましたね。

-人の波も乗りこなす。

岡:悔しいですが、そうですね。 ノリにとっては、波なら何でも良かったんじゃないですかね。 まず「海」という枠を壊し、「丘」へ。 その「丘」という枠も自ら壊し、「山」へ。 そしてちょっと横へそれてマグマへ(笑)。 更には、「人」へ。

-まさに変幻自在。

岡:ノリと言えば丘ばかりが注目されますが、それだけじゃないんです。 最近は、「縦波に乗りたい」と言ってましたね。 縦波って、音とか地震波とかでしょう? 僕はもう、コイツには一生かなわないなと感じ始めていましたね。

-そんな矢先の出来事でした。

岡:はい。僕も最初に聞いたときは、信じられませんでした。


第3回