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感想メモ:芸能人はなぜ干されるのか?

星野陽平
鹿砦社 2014-05-13
¥ 1,728

★★★☆☆

なぜかというと、結論は以下の通り。

それは、芸能界の中枢で芸能プロダクション間で
タレントの引き抜きを禁止を(ママ)
申し合わせる協定があり、
タレントの独立についても一致団結して潰す
業界の結束力があるからだ。

芸能界というと、ものすごく金回りが良い
世界であるような印象がある。
しかしそれは、事務所側の話であって、
タレントのギャラは相当ピンハネされている模様。

特に、お笑いの吉本の給料は、大御所を除くと
テレビに出ているクラスであっても、とても安いらしい。
半分以上は会社に抜かれるそうだ。

大御所になると、ギャラも上がって来るが、
それでも独立や事務所移転となると、
「○○を使ったらうちのタレントは全部引き上げる」
といった文句で、仕事を回さないように圧力がかかる。

例えば、鈴木あみ、松本恵、セイン・カミュ、
眞鍋かをり、沢尻エリカ、川村ゆきえ、田原俊彦…

芸能界は、労働者の権利が非常に弱く、
独立や事務所移転で干されるなど、
業界としては非常に遅れていることがわかった。
アメリカはタレントの権利がとても強い。
エージェントも資格が必要なのだという。

ちなみに声優業界は、アメリカのモデルを参考にしており、
俳優業界に比べると、労働者側の権利は強いようだ。

テレビで見て知っている芸能界は、
華やかな表の面だけであって、
裏のドロドロした世界はこうなっているんだ、
ということがよくわかった。

星野陽平
鹿砦社 2014-05-13
¥ 1,728

感想メモ:日本はなぜアジアの国々から愛されるのか

★★★★☆

日本は、自分の国のことをキライな人が多いという、
世界的に見るとおかしな国だ。
これは、自然とそうなったわけではなく、
そういう意図の元に作られた教育の賜物である。

それが、いい影響をもたらしているのであれば、
別にいいかとも思わなくもないが、
そうとも思えない。

特に、日本は世界から好かれている国であり、
嫌っているのは中国と韓国と北朝鮮ぐらいのものだ。
これはBBCにより世界的な調査からもわかる。
日本は常に好かれている国の上位なのだ。

こういうことを知らずに、
日本はアジアから嫌われている、
と誤った理解をしているのはよろしくない。

この本では、アジアの支援の現場で活躍している著者が、
その国の人々と触れ合った体験を通して、
日本という国がどう見られているのかを語っている。

科学的にきちんと証明できるだけでも、
日本の歴史は1500年ぐらいあるんですよ。
それでも世界一なんです。だからもう堂々と胸を張って、
「われわれは世界一歴史を持った国家である、その国民である」
といったほうがいいですよ。(p6)

ベリリュー島の村人に言い伝えられていることがある。
「強風が吹いたら日本人が造った建物へ逃げ込め」

多くの日本人は、パラオをスキューバ・ダイビングのできる
リゾート地としてしか思っていないような気がする…
日本の子供たちにも、パラオの人々が
「日本を愛している々と伝えていきたい。(p74)

セロトニントランスポーター遺伝子は
別名「不安遺伝子」と呼ばれ、
それを最も持っているのが日本民族。
日本人は約80%、アメリカ約44%、南アフリカ約28%…(p139)

日本に対して好意を持ってくれている国があり、
けれども日本では、そのことがほとんど知られていない、
というのはとても残念なことだ。

子供には、「世界的に見れば普通」というレベルの、
健全な愛国心を持って欲しい。

感想メモ:実践 行動経済学

リチャード・セイラー,キャス・サンスティーン
日経BP社 2009-07-09
¥ 2,310

経済学は、
「人間は完全に合理的な行動を取る」
と仮定している。
しかし、自分のことを考えればすぐわかるが、
そんなことはない。

さっさとやればいいと、頭ではわかっていても逃避する。
時間のムダだと思うことに没頭する。
10円の節約をして10000円の無駄遣いをしたりする。
何より「めんどくささ」にものすごく弱い。

だって人間だもの。

では、その人間らしさを考慮したらどうか。
具体的には‥

  • 選択肢を多くしすぎない
  • デフォルトの選択肢を推奨されるものとする
  • 選択肢の検討は、可能な限り簡単にする

など。

こういったことによって、
多くの人々が最大の利益を得るような、
制度設計が可能になる。

この本では、こういった工夫のことを
「ナッジ」と呼んでいる。

実例として、
資金運用プランの設計、
保険制度の設計、
などが挙げられている。

この考え方は、人々を狙い通りに動かす、
という強力な力を秘めているので、
良心を持った運用が求められる。

以下、メモ。

社会的影響力は二つのカテゴリーに大別される。
第一のカテゴリーは「情報」である…
第二のカテゴリーは「仲間からの圧力」(ピア・プレッシャー)
である…(p91)

つまり、「みんなやってるよ」効果。
「みんな悪いことやってるよ」にしてはいけない。
「みんないいことやってるよ」にするのがポイント。

社会的に望ましい行動にナッジしたいなら、
現在の自分たちの行いが社会的標準レベルよりも
良いことを絶対に知らせてはならない(p114)

え?がんばりすぎた?もっと手を抜こう。
となるから。

制度設計に関わる人には、
ぜひ一読をオススメしたい。
ただ、ページ数多いので注意。

リチャード・セイラー,キャス・サンスティーン
日経BP社 2009-07-09
¥ 2,310

感想メモ:ハーバード白熱教室講義録 上下

★★★☆☆

これからの「正義」の話をしよう
がヘビーだったということはすでに書いたが、
こちらを先に読んでおいた方がよかったのかも。

テーマはほぼ同じなのだが、
こちらはディスカッションの内容も収録しているので、
多少とっつきやすいからだ。

ただ、一回の講義の内容を数十ページにまとめているので、
しっかり理解しようと思うと、繰り返し読む必要がある。
そして私は、繰り返し読んでいません。

ということで、読んでなんとなく覚えているのは、
以下のところ。

ベンサムの功利主義は
「最大多数の最大幸福」という標語に
集約される事も多い。(p30)

他は率直に言って忘れました!

星の数は私には早かった、と言う程度の意味で、
響く人には★4,5個になるのだと思う。

感想メモ:「知」の挑戦 本と新聞の大学 I ・II

姜尚中,一色清,依光隆明,杉田敦,加藤千洋,池内了
集英社 2013-02-15
¥ 777
姜尚中,一色清,中島岳志,落合恵子,浜矩子,福岡伸一
集英社 2013-02-15
¥ 798

★★★☆☆

各界の識者たちが、政治や社会、経済、科学など、
様々な分野について話す、連続講義の内容をまとめたもの。

I、IIがあるが、独立したトピックが集まっているので、
IIから読んでも大きな被害はない。

むしろ、IIの第10回のまとめから入って、
興味がありそうな話を読んでいく、
という形でも良いと思う。

個人的には、IIで語られていた、画家のフェルメールと、
顕微鏡を作ったレーウェンフックの関係についての仮説が
「へぇー」という感じだった。
読まないとわけわかりませんね。

この多様なトピック、全てに興味がある人は少ないと思うので、
興味がある部分を拾い読みする、という読み方でもよいのかな、
と思いました。

姜尚中,一色清,依光隆明,杉田敦,加藤千洋,池内了
集英社 2013-02-15
¥ 777
姜尚中,一色清,中島岳志,落合恵子,浜矩子,福岡伸一
集英社 2013-02-15
¥ 798

感想メモ:選択の科学

シーナ・アイエンガー
文藝春秋 2010-11-12
¥ 1,700

★★★★☆

「人生は選択の連続」だ。

では、選択とはなんだろう?

わたしたちが「選択」と呼んでいるものは、
自分自身や、自分の置かれた環境を、
自分の力で変える能力のことだ。 (p23)

選択するためには、まず
「自分の力で変えられる」という認識
持たなくてはならない。(p23)

「自分の人生は、自分で変えられる」という認識。
雇用流動性の少ない日本では、この認識は、
あまり高くないように思う。

仕事の自己決定権は、健康にも影響するというのだから、
笑いごとではすまされない。

仕事上の裁量の度合いが小さければ小さいほど、
勤務中の血圧は高かった。(p34)

人々の健康に最も大きな影響を与えた要因は、
人々が実際に持っていた自己決定権の大きさではなく、
その認識にあった。(p35)

最初にも出てきたように、
「認識」というところがポイントであり、救いだ。
そういった「認識」を持つには、
小さな成功体験を持つことが大事であるようだ。

他にも、個人主義と集団主義における
「選択の自由度」に対する認識の違いや、
ヒューリスティックスのような
「人間の選択のクセ」についても触れられている。

著者は、子供の頃に視力を失ったそうだ。
そして現在は、コロンビア大学のビジネススクールで、
教鞭を取っているとのこと。

彼女はどんな選択をしてきたのだろうか。

シーナ・アイエンガー
文藝春秋 2010-11-12
¥ 1,700

感想メモ:あしたの経済学―改革は必ず日本を再生させる

★★★★☆

竹中氏が小泉内閣に入っていた2003年の本だが、
内容は10年経った今読んでも、違和感を感じない。
それどころか、現在の安部内閣での政策と
重なる部分が多いのだ。

一番の理想は、難しいことではありますが、
物価上昇率をゼロから数%程度の範囲で安定させることです。(p81)

これは、10年経って、やっと日銀の目標として設定されたところ。

国債発行についても、
「10年間でプライマリーバランスを回復させる」
は全く実行できず、むしろ悪化した10年だった。

我が国の財政事情 (平成24年度予算政府案)
こちらを見ると、社会保障費の増加ペースが早すぎる。
高齢化が進む今後、社会保障費が勝手に減る見込みはなし。
ここをどうにかしないと、財政バランスは無理っぽく見える。

私はかねてから、日本で特区をつくる意義は大きいと考えていて、
「これを日本の切り札にすべきだ」と主張していました。(p208)

こちらも、10年経って今まさに動き始めている。
国家戦略特区、8月後半にも地域指定 :日本経済新聞

中小企業経営者の個人保証からの脱却についても、
まさに提案されている方向になりそうだ。

ということで、安部首相の政策は、
かなり竹中氏の意見を反映したものになっている。
と思ったら、安部内閣で日本経済再生本部産業競争力会議のメンバーに入っていた。
さもありなん。

日本経済についてわかりやすく書かれていて、
かつ、出版後10年の状況をわかって読めておもしろかった。

感想メモ:これからの「正義」の話をしよう

★★★★☆

400ページ弱のボリュームと文字の密度に、
「ハーバード白熱教室」を全12回見た方がいいかな、と思った。
が、悔しいので、がんばって読んでみた。
そこで、この本との戦い方を提案してみる。

  • 335ページからが、本全体のまとめとなっているので、
    まずここから読んで全体像を把握する
  • まとめの中のキーワードが気になったら、
    目次で探して該当部分を読んでみる
  • 上の2つを繰り返す

これで、最初からがんばって読む場合に比べ、
大げさではなく、挫折率は1/10くらいになるだろう。

以下が、全体像を把握するヒントとなる。

これほど広く多様な民主的社会が
どうすれば公正な社会に必要な連帯と相互責任の意識を
育てられるかは、深刻な問題だ。(p339)

公正な社会には強いコミュニティ意識が求められるとすれば、
全体への配慮、共通善への貢献を市民のうちに育てる方法を
見つけなければならない。(p339)

市場は生産的活動を調整する有用な道具である。
だが、社会制度を律する基準が市場によって変えられるのを
望まないならば、われわれは市場の道徳的限界について
公に論じる必要がある。(p341)

まとめを読んでいると、サンデル教授が目指すものは、
日本では長年かけて培われてきたものであり、
ある程度において実現しているものだ、と感じる。

このことは、決して世界的に当たり前のことではなく、
むしろ非常に珍しく、ありがたいことなのだが、
そのことに多くの日本人は無自覚だ。

自分の良さは自分からは見えず、
他人の目を通して、初めて明らかになるからだ。
「海外に出て初めて、日本の良さがわかった」
というのはよく聞く話だが、それでは遅い。

日本はアメリカを目指し、
アメリカは日本を目指し、
また日本はアメリカを目指し、
そしてアメリカは日本を目指す。

皮肉なものだ。

ただ、こういった日本の美徳は、失われつつある。
維持するための努力は必須。
それには、やはり教育だろう。

日本にいながら、日本人としての国際感覚を身につけるには、
JOG 国際派日本人養成講座 のメルマガがオススメ。

教育についてのステップメールも、無料とは思えない質と分量。
国際派日本人養成講座ステップメールコース JOG Step 教育再生

感想メモ:「当事者」の時代

佐々木 俊尚
光文社 2012-03-16
¥ 998

★★★★☆

著者の佐々木俊尚氏のことは、
キュレーターという言葉を広めたとか、
twitterでフォロワーが多いというぐらいの
知識しかなかったのだが、
毎日新聞の記者だったのだそうだ。

メディアと当局(警察とか)との関係性など、
業界の人には常識かもしれないが、
部外者には知らされないさまざまな「ジョーシキ」が
語られていて、ふーん、と読んだ。

業界がよくわかっているという視点から、
メディアに必要以上に肩を持つ事もなく、
無能と断じることもなく論じていて、
いい感じのバランス。

この本のタイトルは、
「一般市民の代表」という顔をしながらも、
実はそうではなかったりするメディアに対して、
「当事者たれ」というメッセージ、ではなく
もう一段深かった。

しかしこのような人たちを、
「当事者であれ」と批判することはできない。
なぜならそのようにして他者に当事者であることを求めるという
行為自体が、すでに当事者性を帯びていないからだ。

だから私にできることは、私自身が本書で論考してきたことを実践し、
私自身が当事者であることを求めていくということしかない。

あえて注文をつけるとすれば、
さまざまなストーリーを張り巡らせすぎ、
最も読ませたいであろうメッセージにまで、
たどり着かずに脱落する読者も多かろうと感じた所。
私も危なかった。

でもたどり着けてよかった。
おもしろかったです。

佐々木 俊尚
光文社 2012-03-16
¥ 998

感想メモ:団塊ジュニア1400万人がコア市場になる!!

★★★☆☆

今後、日本の人口は減って行く。
生活必需品はだいたい揃っているし、市場は飽和している。
そんな中で、誰をターゲットに商売をすればいいのか?

という疑問に答えている本。

「団塊ジュニア世代」というと、一般的には
第二次ベビーブーム世代とイコールだが、
著者によると、それは「ニセ団塊ジュニア世代」であり、
「真性団塊ジュニア世代」はその数年後の世代なのだそうだ。

そしてこの世代こそがキーである、
というのが著者の主張。

人々の関心は大量生産、大量消費から、
高い付加価値に満足を得ようとする
方向に向かっている。(p221)

 

その専門分野に詳しいアドバイザー的な役割が
求められている。(p223)

 

自分の心と体をきれいに元気に保とうとする意識は、
若い世代ほど敏感で、そういうことにお金をかけることにも
ためらいがないと言えそうだ。(p238)

デモグラフィックは、ほぼ変わらない。
その世代が持つ志向も、変わりにくい。
一度つかめば、応用が効く知識になるだろう。

消費者向けのビジネスで、
特にマーケティングに関わっている人には、
様々な気づきが得られる本でしょう。