「★★★★」カテゴリーアーカイブ

感想メモ:日本の景気は賃金が決める

★★★★☆

アベノミクスという言葉はほとんどの人が知っているだろうが、
その内容と意味を説明してみて、と言われると、
ぐぬぬ、となる人がほとんどだろう。

本書はそんな人がターゲット。
かなりの割合の人が当てはまろう。

以下の点は、あまり知らなかったので、
なるほど〜、と思いながら読んだ。

日本の不況の根本原因は、単純に「消費不足」であり、
これを貯蓄の面からみて「貯蓄過剰」などということもあります。(p173)

国民所得の約七割は労働者に賃金所得として分配されるのですから、
「賃金所得が民間消費に使われる」部分を活性化せずに、
本当の意味での景気回復など起きないことがわかります。(p175)

  • 1男女の賃金格差
  • 2企業規模の大小による賃金格差
  • 3正規・非正規などの雇用形態による賃金格差
  • 4勤続年数の長短による賃金格差

が、消費不況などの問題の根底にあり、これらは
属性による賃金格差といえます。(p198)

日本での「属性による賃金格差」は、国際的にみて
“異常に大きな賃金格差”です。(p218)

パートタイム労働者の賃金はフルタイム労働者の6割弱
女性の賃金は男性より約3割低い
30人未満の企業は大企業の約5割の賃金しかもらえない

イギリスとスウェーデンでは、社員1000人以上の大企業よりも
中規模の企業の方が、平均的に高い賃金を支払っています。(p215)

つまり、賃金が下がることが原因で、消費が足りていないこと。
属性による賃金格差が大きすぎること。
が、不景気の大きな要員としている。

それに対し、アベノミクスの意味合いを議論した上で、
「都市部への人口集中」と「都市部の不動産価格の継続した上昇」を、
景気対策として提案している。
その意図するところは、本書を参照してほしい。

親書だから内容が薄いのは仕方ないかな、
などと思いながら読んだのだが、
しっかりデータに当たっての分析が盛り込まれている、
ものすごく濃い本だったのはよい驚きでした。

感想メモ:ミッション 元スターバックスCEOが教える働く理由

★★★★☆

BODY SHOP、スターバックスジャパンと、
二つの会社のCEOを務めた岩田氏。

どちらの会社も、魅力的な創業者が会社の理念(ミッション)を掲げ、
そのミッションによって束ねられた人たちによって、運営されている。

「想定外」のときにむしろ重要なのは、原理原則である。(p176)

ミッションというのは、立ち返る土台、そもそもの動機とも
言うべきものなのだろう。

皆が、働くことに納得し、働くことを喜んでいるような会社。
働くことで、相手も自分たちも幸せになるから。
それができている会社は、強い。

いいものに対しては、然るべき対価を気持ちよく払うことを厭わないし、
そもそも他に代わるものがないので、価格そのものが気にならなくなる。
私は、これこそが第五次産業の姿だと思います。(p166)

そして、ミッションが必要なのは、会社だけではない。
個人としても、立ち返る原理原則である「ミッション」を持とう。
これが岩田氏のメッセージだった。

さぁ、ノートに書いてみよう。
書くと思いの他叶うもの。

感想メモ:選択の科学

シーナ・アイエンガー
文藝春秋 2010-11-12
¥ 1,700

★★★★☆

「人生は選択の連続」だ。

では、選択とはなんだろう?

わたしたちが「選択」と呼んでいるものは、
自分自身や、自分の置かれた環境を、
自分の力で変える能力のことだ。 (p23)

選択するためには、まず
「自分の力で変えられる」という認識
持たなくてはならない。(p23)

「自分の人生は、自分で変えられる」という認識。
雇用流動性の少ない日本では、この認識は、
あまり高くないように思う。

仕事の自己決定権は、健康にも影響するというのだから、
笑いごとではすまされない。

仕事上の裁量の度合いが小さければ小さいほど、
勤務中の血圧は高かった。(p34)

人々の健康に最も大きな影響を与えた要因は、
人々が実際に持っていた自己決定権の大きさではなく、
その認識にあった。(p35)

最初にも出てきたように、
「認識」というところがポイントであり、救いだ。
そういった「認識」を持つには、
小さな成功体験を持つことが大事であるようだ。

他にも、個人主義と集団主義における
「選択の自由度」に対する認識の違いや、
ヒューリスティックスのような
「人間の選択のクセ」についても触れられている。

著者は、子供の頃に視力を失ったそうだ。
そして現在は、コロンビア大学のビジネススクールで、
教鞭を取っているとのこと。

彼女はどんな選択をしてきたのだろうか。

シーナ・アイエンガー
文藝春秋 2010-11-12
¥ 1,700

感想メモ:あしたの経済学―改革は必ず日本を再生させる

★★★★☆

竹中氏が小泉内閣に入っていた2003年の本だが、
内容は10年経った今読んでも、違和感を感じない。
それどころか、現在の安部内閣での政策と
重なる部分が多いのだ。

一番の理想は、難しいことではありますが、
物価上昇率をゼロから数%程度の範囲で安定させることです。(p81)

これは、10年経って、やっと日銀の目標として設定されたところ。

国債発行についても、
「10年間でプライマリーバランスを回復させる」
は全く実行できず、むしろ悪化した10年だった。

我が国の財政事情 (平成24年度予算政府案)
こちらを見ると、社会保障費の増加ペースが早すぎる。
高齢化が進む今後、社会保障費が勝手に減る見込みはなし。
ここをどうにかしないと、財政バランスは無理っぽく見える。

私はかねてから、日本で特区をつくる意義は大きいと考えていて、
「これを日本の切り札にすべきだ」と主張していました。(p208)

こちらも、10年経って今まさに動き始めている。
国家戦略特区、8月後半にも地域指定 :日本経済新聞

中小企業経営者の個人保証からの脱却についても、
まさに提案されている方向になりそうだ。

ということで、安部首相の政策は、
かなり竹中氏の意見を反映したものになっている。
と思ったら、安部内閣で日本経済再生本部産業競争力会議のメンバーに入っていた。
さもありなん。

日本経済についてわかりやすく書かれていて、
かつ、出版後10年の状況をわかって読めておもしろかった。

感想メモ:自分で「疲れ」をとる!

★★★★☆

整体の考え方を元にした、
体のセルフメンテナンスのやり方や、
体についての知識を教えてくれる本。

身体のどの部分にしろ、
左右の緊張の差が大きくなってくると
違和感や疲れを感じます。(p22)

骨盤の真ん中にある仙骨は、
息を吸うときに後ろに傾き、
吐くときにはお辞儀するように前に傾きます。

ラジオ体操から誤解されがちだが、
「吐くときは背中を丸めるから骨盤後傾」ではない!
吐くときに背筋が伸びる。
スポーツでは、だいたい息を吐きながら動く。

この動きがスムーズにいかず、 十分前に傾く(十分息を吐く)前に
後ろに傾きはじめ(息を吸いはじめ)てしまうのです。

呼吸と呼吸の間の隙間、
とりわけ吐く息から吸う息に移る「間」が、
身体にとってもっとも完全に脱力する瞬間なのです。(p28)

<疲れすぎ>→<うまく脱力できない>
→<呼吸が深くできなくなる>→<眠りが深くなれない>
→<疲れがとれない>→<まずす疲れやすくなる>
という「負のスパイラル=疲れスパイラル」が起きてしまう(p35)

呼吸眠りを深くするためには、
凝り固まった疲れをある程度
眠りにつくまでにほぐしておく必要がある(p35)

これは整体に限らず、何の呼吸法や身体技法でも、
<みぞおちがゆるむこと、下腹(丹田)に力があること>が
身体の働きのよさを表す共通した指標です。
それが同時に、深い呼吸を生むのです。

引用が多くなってしまったのは、
私がこういうのが好きだからなのだが、
それでも歯ごたえがある本だった。
あまり好きでない人には、ちょっと厳しいかも。

感想メモ:からだのメソッド-立居振舞いの技術

★★★★☆

立つ、歩く、座るといった日常の動き。

意識しなくてもできるからいいじゃないか、
という考え方もあるだろうが、
意識することで初めて見えることもある。

PCが普及している現代社会では、
日常的に運動できている人の方が少ないはず。

となると、こういった日常の動きを、
自覚的に正しい動きとして行うこと、
これが健康への効率的な道であるように思う。

立ち方メソッド
1. 足裏の重心位置を確かめる
2. 足指の感覚をとり戻す
3. 足指のケア
4. 足指の感覚
5. 膝と爪先をまっすぐにする
6. 膝と大腿骨をまっすぐにする
7. 頭の位置を整える(工夫する)
8. 「耳肩・鼻臍」〜頭の位置をさらに整える
9. 猫背の治し方 両肩の距離を遠くに保つ

西洋式の歩き方
1. 踵重心で立つ
2. ターンアウト 股関節を支点に脚全体を外旋 深層外旋筋を使う
3. 正中線の上を歩く
4. ターンアウトと足運び 五本の足指がすべて地面につく
5. 爪先から着足する

ということで、数々の動きのヒントを得たので、
日々実験してみている。

体は、手をかけた分だけ変わっていく。
手間と時間を投資する価値がある。

感想メモ:バケる人に育てる

★★★★☆

北島康介のコーチとして有名な平井氏。
北島以外にも選手を育てていて、
様々なタイプの選手に対して成果を出しているのが、
コーチとして非凡であるように思う。

複数の人を育て、下げる成果を出させるというプロセスには、
再現性があるということです。(p12)

その指導の秘訣はなんなのだろう?

予想に反して、「身体的な素質」よりも、
「精神的な素質」を重視しているのだった。

選手の素質を見抜く際には、身体や技術といった「体の素質」以上に、
我慢強さ、忍耐力、集中力といった「心の素質」が
大切ではないかと思うようになりました。(p27)

人を伸ばすには、その人自身に集中させてあげることが大切です。
脇目もふらずに自分のゴールだけを見つめ、
自分の可能性という絶対値を基準として、
愚直に努力できる人が伸びていきます。(p60)

指導という分野に限らず、
結果を出す人には共通点が多いな、
と感じたのが、以下の部分。

ものごとは「やるか、やらないか」。
ただそれだけかもしれません。(p69)

チームづくりに大切なことは、
「日頃がんばっている人」を評価する
しくみをつくることです。(p171)

この本は、ロンドンオリンピックの前に書かれている。
文中に名前が出てくる寺川綾、加藤ゆか、上田春佳は、
なんとロンドンの女子4×100mリレーの4人の中の3人で、
日本記録を2秒近く縮めて銅メダルを獲得している。

確かに、平井コーチの指導は再現性があるようだ。
しかし、その指導のスタイルには「型がない」そうだ。

おもしろい本でした!

感想メモ:天地明察

冲方 丁
角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-12-01
¥ 1,890

★★★★☆

「暦」の話だということは知っていたが、
一体その素材でどうおもしろい話になるのか、
想像がつかなかった。

しかし読んでみたところ、期待は良い方に裏切られた。
おもしろかった!

内容は、確かに暦の話。
しかし焦点は、暦を作る人物たちのストーリーであり、
登場人物たちを魅力的に描く作者の力量が優れている、
ということになるのだろう。

関孝和、水戸光圀など、(名前は)よく知られている人物が
描かれているが、どこまで本当なのか?という疑問は残る。
しかし、小説なのだから、味付けしてあるのは当然。
史実は別にあると注意しつつ、楽しむのがよいだろう。

(と思ったら、こんなところがありました。
ここが違うよ『天地明察』:参考文献の著者から(0/前口上) )

冲方丁は、かなり前に「マルドゥック・スクランブル」を読んのだが、
全くタイプが異なっていて、これまた良い意味でビックリ。

今後も期待!

冲方 丁
角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-12-01
¥ 1,890

感想メモ:これからの「正義」の話をしよう

★★★★☆

400ページ弱のボリュームと文字の密度に、
「ハーバード白熱教室」を全12回見た方がいいかな、と思った。
が、悔しいので、がんばって読んでみた。
そこで、この本との戦い方を提案してみる。

  • 335ページからが、本全体のまとめとなっているので、
    まずここから読んで全体像を把握する
  • まとめの中のキーワードが気になったら、
    目次で探して該当部分を読んでみる
  • 上の2つを繰り返す

これで、最初からがんばって読む場合に比べ、
大げさではなく、挫折率は1/10くらいになるだろう。

以下が、全体像を把握するヒントとなる。

これほど広く多様な民主的社会が
どうすれば公正な社会に必要な連帯と相互責任の意識を
育てられるかは、深刻な問題だ。(p339)

公正な社会には強いコミュニティ意識が求められるとすれば、
全体への配慮、共通善への貢献を市民のうちに育てる方法を
見つけなければならない。(p339)

市場は生産的活動を調整する有用な道具である。
だが、社会制度を律する基準が市場によって変えられるのを
望まないならば、われわれは市場の道徳的限界について
公に論じる必要がある。(p341)

まとめを読んでいると、サンデル教授が目指すものは、
日本では長年かけて培われてきたものであり、
ある程度において実現しているものだ、と感じる。

このことは、決して世界的に当たり前のことではなく、
むしろ非常に珍しく、ありがたいことなのだが、
そのことに多くの日本人は無自覚だ。

自分の良さは自分からは見えず、
他人の目を通して、初めて明らかになるからだ。
「海外に出て初めて、日本の良さがわかった」
というのはよく聞く話だが、それでは遅い。

日本はアメリカを目指し、
アメリカは日本を目指し、
また日本はアメリカを目指し、
そしてアメリカは日本を目指す。

皮肉なものだ。

ただ、こういった日本の美徳は、失われつつある。
維持するための努力は必須。
それには、やはり教育だろう。

日本にいながら、日本人としての国際感覚を身につけるには、
JOG 国際派日本人養成講座 のメルマガがオススメ。

教育についてのステップメールも、無料とは思えない質と分量。
国際派日本人養成講座ステップメールコース JOG Step 教育再生

感想メモ:足元の革命

前田 和男
新潮社 2003-08
¥ 714

★★★★☆

今では珍しくない「ウォーキングシューズ」というカテゴリー。
その歴史は意外と浅く、1980年代にアシックスから発売された、
「ペダラ」という靴が最初だったそうだ。

この本は、その「ペダラ」開発のストーリーと共に、
靴や足について、お役立ちの情報が書かれている。

中村は新しい靴に
「歩くことで人間性を回復する」という
ライフスタイルの提案を託そうと
思いついたのである。(p31)

これは1980年代の話だが、
今でもそのまま通用するコンセプトだ。

足全体にかかる体重を100とすると、
おおよそ「かかと」へは50、
「親指の付け根」へは30、
「小指の付け根」へは20
の大きさに設計されている。(p110)

3歳頃から13〜14歳、つまり
幼稚園から中学1〜2年にかけての時期に、
足をじゅうぶん鍛え、その”品質”を高めておくことが
何よりも大切であろう(p137)

つまり、歩くことで大切なのは、
直接消費したカロリー分に加えて、
このように体温をつくって
からだがより多くの脂肪を燃やして
エネルギーを使うようにすることなのである。(p144)

足については、運動をしている人であっても、
デザインとサイズと幅ぐらいで
選んでしまっている人が多いのではないか。

足は体の土台であり、とても大事なもの。
一度勉強しておくと、一生の知識になるはず。

さすがに、asicsのサイトは勉強になるので、オススメ。
ウォーキング コンシェルジュ-『靴のフィッティング』-アシックス・WALKING SQUARE

前田 和男
新潮社 2003-08
¥ 714