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感想メモ:ビジネスに日本流、アメリカ流はない

ビジネスに日本流、アメリカ流はない
ビジネスに日本流、アメリカ流はない
  • 発売元: 東洋経済新報社
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2005/04/27

★★★☆☆

コマツアメリカ元社長の中村健一氏。
25年アメリカに滞在してきた氏が語る、
日本/日本人とアメリカ/アメリカ人の違い。
そして両者がお互いの長所を活かしつつ
ビジネスを進める上での秘訣。

「鷲の人、龍の人、桜の人」が米、中、日の比較だったのに対し、
本書は日米のより詳細な比較となっている。
まず「鷲の人」に目を通してから、アメリカについて
より理解を深めたい人は、本書を読むと良い感じ。

日本人は確かに何事をやるにも用意周到で効率良く仕事を進めていく
スマートさがあり、たとえて言うならスピード感ある小さな歯車である。
しかし、この小さな歯車では効率良く回ることができても大きな力は
伝えることはできない。
一方アメリカ(人)はとてつもなく大きいフライホイールで
なかなかイナーシャがかからずイライラする場面もあるが、
一度回り出すともう止めることができないほどの力で回転する。

中村氏はアメリカ人相手のプレゼン前にはジョークを欠かさない、
というかなり外向的な人で、相手を理解する努力も怠らなかった。
だからこそアメリカでも実力を発揮できたのだろうし、
その働きが評価されコマツアメリカの社長にもなったのだろう。
逆に言えば、中村氏のような人はアメリカ以外の場所に行っても
実力を発揮しただろうし、評価されただろう。

しかし、一般的な日本人は、中村氏のようなタイプではない。
むしろもっと大人しい人が多い。
そういった人がアメリカで実力を発揮するには、どうしたらいいのだろうか。
内向的な性格を根性で改造して、渡り合わないといけないのだろうか。
あるいは、そういった環境に向いている人がその役割を担うべきなのだろうか。
といった点について考えさせられたが、明確な答えは出なかった。

アメリカ人と仕事をする人には参考になるだろう。
また、英語の勉強法についても1章割かれている。内容はとても正統派。
オススメ度は★3つです。

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感想メモ:貧困の光景

貧困の光景
貧困の光景
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2007/01/17

★★★★☆

世界での貧困の現実

日本でも、貧富の差や貧困が問題となってきている。
しかしこの本を読むと、世界レベルで見ると
全然良い方なのだとわかった。

  • 私はもうその頃には、集めたお金を海外のどんな組織に渡しても、
    必ず一部は(それも非常に多くの部分を)盗まれる、
    つまり誰かのポケットに入れられるという事実を知るようになっていた。
  • 初めに私は、貧困の定義をしておこう。
    「貧困とは、その日、食べるものがない状態」を言う。
    従って日本には世界的なレベルで言うと一人も貧困な人がいない。
  • 素材で渡すと親たちはそれを栄養失調児に食べさせず、
    その兄姉たちに食べさせるか、ひどい時には、
    それを市場で売ってしまうからである。
  • つまり字も書けない、たし算も簡単な割り算もできない、
    衛生の観念もない、という人は、仮に先進国が投資によって
    何かの工場を作ったとしても、労働力として使えないのである。
  • 「もしHIVがプラスだとなると、親たちはもう、子供にミルクを
    与えないんです。いきる可能性のない子供に与える食事は、
    貧しい家庭にはないんです。」

生まれた瞬間からとんでもないハンデを背負った環境に
生まれてくることを、誰が防げるだろうか?
問題は、「人の命は平等」というような
きれい事では何も解決できない。

一方で、援助のためにお金を渡しても、目的のために使われない。
有力者が懐に入れて、支援したい人に届かない。
届いても、その日の暮らしのために使ってしまう。
教育が最も効果的なのだろうが、今日のご飯に困っている状況で、
どうすれば教育に力を注げるだろう。

月並みだが、日本にこの時代に生まれて良かったと心から思った。
そして、国際援助というのは、ただお金を渡せばいいのではなく、
思ったよりもずっと難しいものなのだとわかった。

認識を新たにしてくれた良い本でした。オススメ度は★4つ。

貧困の光景
貧困の光景
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2007/01/17

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感想メモ:日本語と韓国語

日本語と韓国語 (文春新書)
日本語と韓国語 (文春新書)
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 735
  • 発売日: 2002/03

★★★☆☆

日本語はどの言語とも似ていないと言われるが、
韓国語とは文章の構造や単語など、共通する部分が多い。

そういった日本語と韓国語の共通点や異なる点、
言語の文化的な背景や最近の風潮などを説明している本。

歴史的な背景などから、複雑な関係にある日本と韓国だが、
お隣の国であることに代わりはなく、知っておいた方が良いことは多い。
例えば、韓国の人は「朝鮮」と言われるのを嫌うそうだが(例:高麗人参)、
北朝鮮の人は「朝鮮」と言う言葉に悪い意味は感じないそうだ。

同時に、タイトル通り日本語と韓国語についての雑学的な知識も得られる。
例えば日本で同音異義語の釜、鎌、鎌などが韓国語でも同音異義語である、とか。
しかし漢字は同じでも意味は異なるものもあるようだ。

日本人として知っておいた方が良いことは多いと思った。
読んでおくとよいと思う。★3つ。

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感想メモ:自衛隊秘密諜報機関

自衛隊秘密諜報機関―青桐の戦士と呼ばれて
自衛隊秘密諜報機関―青桐の戦士と呼ばれて
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2009/06

★★★★☆

自衛隊秘密諜報機関

佐藤優氏によりインテリジェンスという単語も一般化した感がある。
現代においても、CIAを挙げるまでもなく、諜報活動、
いわゆるスパイ活動は諸外国においては当たり前に行われている。

日本ではどうなのだろうか?
戦時中は自衛隊陸軍中野予備校が有名だが、
戦後についてはあまり知られていない。
というか私はよく知らない。

本書の著者阿尾氏は、戦後の日本、台湾、中国を舞台に諜報活動を繰り広げてきた。
80歳を超え現役を引退した著者が、当時の活動の内容を語っているのがこの本である。

スパイもの、というジャンルに対する興味もさることながら、
舞台が日本の近い過去ということもあり、かなりワクワクしながら読めた。
語られていないことも当然多いのだろうが、それでも余りある、興味深い話が多かった。

以下、メモ。

  • 「いつも何かをしてあげたい」と思う心。もしかしたら、これこそが諜報要員としての私の最大の武器だったかもしれない。
  • 一ヶ所に、一週間以上滞在しなかった。
  • ホテルは事前に調査されるので、予約制しなかった。
  • 中国国内の飛行機も、前述の理由から予約しなかった。
  • 常に相手の立場を考え、地元の人々と心からつきあうようにした。

エピソードについては紹介しない。
興味がある人は読んでみてほしい。★4つ。

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感想メモ:本当はヤバくない日本経済

本当はヤバくない日本経済 破綻を望む面妖な人々
本当はヤバくない日本経済 破綻を望む面妖な人々
  • 発売元: 幻冬舎
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2009/04/23

★★★★☆

「外需依存型国家である日本は、円高の影響で輸出企業が壊滅、経済破綻する!」

よく吊り広告などに載っていそうで、なんとなくそうなのかなぁと
思ってしまうようなフレーズだが、実は四重に間違っているらしい。
その間違いとは、以下の通り。

  • 日本は他の先進諸国に比べて外需依存型じゃない
  • 実効為替レートではまだ円高というほど円高ではない
  • 輸出企業に影響への打撃は円高よりも需要減が大きい
  • 通貨高で破綻した国はない(逆はある)

それぞれの主張はデータに基づいていて、説得力がある。
逆に、マスコミの議論の粗さが目立つ。
まぁ、マスコミはキャッチーな話の方が目を引くので、
正しさは二の次なのだろう。

マスコミの報道を見ていると、過去5年に数回は日本は崩壊していそうだが、
実際はなんとか踏ん張りつつがんばっている。
マスコミは、なぜ適当な理屈で悲観的な話ばかりしたがるのだろうか。

1.経営者は給料を抑えたい
 →「経営環境は厳しい厳しい」と言っておきたい
 →マスコミのスポンサーは企業(のトップ)

2.悲惨な話の方がウケるから

3.単に自虐好き/けなすのが好き

4.どっかの陰謀

まぁ検証できないのでどれでもお好きなもので。

マスコミの情報を鵜呑みにするのではなく、
データに基づいた知識を得ておくのは良いこと。
話もわかりやすいし、良い本だと思う。★4つ。

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感想メモ:エコノミック・ヒットマン

エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ
エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ
  • 発売元: 東洋経済新報社
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2007/12/14

★★★★★

金融危機で陰りを見せているとはいえ、いまだアメリカは
世界全体に対して大きな影響力を持っている。
その影響力は、一体どのようにして作られてきたのだろうか?

方法の一つは、世界一を誇る軍事力だろう。
しかしそれは、あくまで最後の強行手段である
この本では、もう一つの力である経済力により、
他国を支配下に置く方法について書かれている。

その方法とは?
簡単にいうと以下のような流れだ。

発展途上の資源国にアメリカが乗り込み、
融資を受ければ飛躍的な高成長を見込めると口説いて、
大規模な近代化の開発を行う。請け負うのは当然アメリカ企業。
その恩恵は一部の富裕層のみに流れ、貧富の差は拡大。
しかも、飛躍的な高成長は続かないので債務不履行に。
するとIMFや世界銀行が入り、国としての自由は奪われる・・・

ポイントは、全てが合法的に行われているということだ。
コンサルタント、建設業、製造業。それぞれは企業活動を行っているだけだが、
結果としてアメリカ帝国の支配を強めるための駒の1つとなっている。
このやり方を、著者はコーポレートクラシーと呼んでいる。

もう一つのポイントは、普通の国は債務不履行になるような投資はしないが、
アメリカは違うという点だ。これはひとえに、ドルが基軸通過だからである。
この点については北野氏の隷属国家 日本の岐路に詳しい。

著者は、このアメリカの世界帝国化を請け負う、
エコノミック・ヒットマン(EHM)として長年働いてきた。
しかし、自らの行ってきた仕事がいかに世界を歪めているかに気づき、
本書でこの仕組みを告白している。

  • 世界の全人口のうち、もっとも裕福な国々に住む上位五分の一の層と、もっとも貧しい国々に
    住む下位五分の一の層との所得を比較すると、一九六〇年には三〇対一だったが、
    一九九五年には七四対一にまで格差が広がった。
  • もしアメリカの債権国のどこか(たとえば日本や中国)が、
    債務返済を求める決定をしたら、状況は劇的に変化する。
    アメリカは一瞬にして、きわめて危うい状況にいることに気づくだろう。
  • 現代の帝国の本当の筋書きーつまり絶望的な状況の人々から搾取する、
    歴史上もっとも野蛮で、利己的で、最終的には事故破滅的な資源簒奪を実行する
    コーポレートクラシーの物語ーは(中略)あらゆる点で私たち自身の問題なのだ。
  • NBAゼネラル・エレクトリック社の、ABCはディズニー社の、
    CBSはヴァイアコム社の傘下にあり、CNNは巨大な複合企業
    AOLタイムワーナーの一部である。
    新聞や雑誌や出版社の大半は巨大な国際企業に所有され、操作されている。
    メディアはコーポレートクラシーの一部なのだ。

平和な日本に暮らしているからこそ、
資本主義の暗い一面はぜひとも知っておくべき。
最後の1/4程だけでも読む価値がある。
オススメ。★5つ。

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感想メモ:コークの味は国ごとに違うべきか

コークの味は国ごとに違うべきか
コークの味は国ごとに違うべきか
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 2,000
  • 発売日: 2009/04/23

★★★★☆

The World is not flat

 The world is flat(フラット化した社会)は、
トーマス・フリードマンによる「テクノロジーにより
国境を越えた社会のつながりが広がっていること」を示す言葉。

 一方本書の著者ゲマワットHBS教授は、
世界はまだグローバル化しておらず、
セミ・グローバライゼーションの段階に留まっている。
そして数十年はこのセミ・グローバライゼーションの状態が続くと述べる。
つまり、本書の内容を一言でいうと「The world is not flat」だ。

 実際に社会を見てみると、グローバル化は限定的なものである。
GDPに対する貿易の額は、アメリカでも10%程度というのが
クルーグマン教授の示すことだし、本書でも「ほぼ10%」という見方が
示されている。

 なぜか。

 隔たりがあるからである。
その隔たりを、本書では4種類に分類している
CAGE(Caltural,Administrative,Geographical,Economic)。
こういった隔たりを考慮せずにただ「グローバル化」と息巻いても
うまくいきませんよ、というのが本書の主張だ。

 ではどうすればいいか、に関しては詳細に書かれているので読んで欲しい。
タイトルにある通り「コークの味は国ごとに違うべきか」という点については、
「Yes」という答えになるのだろう。
世界はグローバル化しているのだから、同じ商品同じ広告同じ戦略で行けばOK、
なんて話はないということだ。

 
 内容はすばらしいが、マジメに読むとかなり時間がかかる。
私も、世界はまだ大部分がflatではないと思った。★4つ。

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感想メモ:フラット化する世界(上)(下)

フラット化する世界 [増補改訂版] (上)
フラット化する世界 [増補改訂版] (上)
  • 発売元: 日本経済新聞出版社
  • 価格: ¥ 2,100
  • 発売日: 2008/01/19
フラット化する世界 [増補改訂版] (下)
フラット化する世界 [増補改訂版] (下)
  • 発売元: 日本経済新聞出版社
  • 価格: ¥ 2,100
  • 発売日: 2008/01/19

★★★★☆

 有名な本書だが、今ごろ読んでみた。

 内容は伝え聞いて知っていた通り。ネットの発達により世界の距離が縮まり、また距離を超えた仕事のアウトソーシングも進行している。このことを「フラット化」というキーワードで述べているわけだが、その要因を大きく3つにまとめている。

 PC1台あれば、距離を超えて世界中から情報を手に入れ、コミュニケーションを取ることができるような「場」ができたということ、その場を利用する「人」が爆発的に増えたこと、その人たちが場の新しい「使い方」を身につけ始めた、という3つである。本書ではこのこと「三重の収束」と呼んでいる。

 
 確かに、「場」はできた。日本はインフラも十分発達していて、ユーザーもブロガーも非常に多い。しかしこの「フラット化」を活用している人は非常に少ない。それは言語の問題があり、またフラット化の恩恵に預からなくても日々暮らしていけるという環境の要因もあるだろう。

 扉が開かれている。では、その扉はどうすれば開くのだろうか。


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感想メモ:隷属国家 日本の岐路

隷属国家 日本の岐路—今度は中国の天領になるのか?
隷属国家 日本の岐路—今度は中国の天領になるのか?
  • 発売元: ダイヤモンド社
  • 価格: ¥ 1,575
  • 発売日: 2008/09/04

★★★★★

 著者はメルマガ「ロシア政治経済ジャーナル」の著者北野氏。ニュースを追っているだけではわかりにくい国際問題について、考え方を与えてくれる本。

 日本の財政、外交、食料、エネルギーなどの各トピックについて、現状の問題点の指摘だけでなく、今後取るべき方策の提言まで踏み込んで行っている。その現実性についても、過去の他国の実例を引いているため、説得力がある。

 メルマガの方では、時事問題のに見方をリアルタイムで知ることができる。イラク戦争やグルジア問題などについて様々な予言をしていたが、かなり的中していた。こちらも合わせてオススメ。

 本もメルマガもかなり読みやすく書かれているため、お手軽に楽しんで国際感覚を養うことができる。しかし決して内容的が薄いということはない。多くの人に読んでもらって損はない、と思える数少ない本。★5つ。

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感想メモ:2015年の日本—新たな「開国」の時代へ

2015年の日本—新たな「開国」の時代へ
2015年の日本—新たな「開国」の時代へ
  • 発売元: 東洋経済新報社
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2007/12

★★★★☆

 似たテーマの本として「大予測 日本の3年後、5年後、10年後」を以前読んだが、今回のこちらの本の方が頭に入りやすかった。その理由としては、全編の内容が関連しあっている(互いに言及もある)こと、章毎のまとめがあること(結構大事)、一つの項目についての説明が豊富で具体的であることが挙げられる。

 内容は、1〜2章で日本の現状と今後の説明、3章で日本と似た境遇だが成長を続けているイギリスの事例紹介、4章以降は「新たな開国」の提言。

 主張はクリアで、これまでの日本は1億人という均質な市場のみを見ていても成長してこれたが、今後は労働人口も総人口も減っていくため、成長を見込むことはできない。非製造業もグローバル化を考えないといけませんよ(第三の開国をしましょう)、ということ。

 データも豊富で、国際競争力を持つ人材育成のために大学を強化すべき、外国観光客の地域へ直接誘致を伸ばすべきなどの主張にも説得力がある。

 ただし、金融危機以前の本なので、かなり前提条件が変わってしまった。イギリスは大きく沈み込み、「イギリスを見習おう」とは言いにくい状況になった。日本の強みとは何なのか、考え直す材料ともできるだろう。

 全体を通じて、読む価値はある。★4つ。


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