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感想メモ:「ニンジンから宇宙へ」

「ニンジンから宇宙へ」―よみがえる母なる大地
  • 発売元: なずな出版部
  • 発売日: 1996/10

★★★★☆

農薬はいいものではのはわかるが、
無農薬のものは値段が高いし、
ある程度はしょうがない。
という考えの人が多いのではないだろうか。

この本では、農薬や化学肥料がなぜ良くないのかという理由、
そして無農薬の農業の可能性大切さを教えてくれる。

農業は、土だ。
土は、何でできているのか?
いわれてみると知らない。
石が砕けたもの?ではなかった。

そう、土のほとんどが草の化けたものなのです。
(中略)
表土は石の粉ではなく、植物の化けものなのです。

知らなかった…

また、土には理想の養分バランスがあり、
そういう土で作られると、
すばらしい野菜ができるそうだ。

これを化学肥料で達成しようとすると、続かない。
農作物が育つということは、土の養分が移動するということ。
その失った養分が回復しないのだ。

こうした努力はそれこそ十年単位での試行錯誤を経ての結果だ。
なんども挫折しそうになったそうだが、やり切ることができたのは
なぜなのだろう。

奇跡のリンゴ」と共に、読んでおくと良い本。
オススメ度は★4つです。良い本でした。

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感想メモ:「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?

★★★☆☆

数学の参考書「よくわかる」シリーズの著者細野氏の本。
彼の本を読んだ受験生は現在社会人になっているだろうから、
売れるのも頷ける。

年金の話も、わかっているようであまりわかっていないまま
過ごしている気がする。
実際、読んでみて知らない話がそこそこあった。

  • 未納は第1種の人だけの話なので
    (他は天引きなので考えてみれば当たり前)、
    年金支払者全体の5%程度。
    なので、破綻はしないっぽい。
  • 2009年から、国民年金の支払の1/2を税金から賄っている
  • 所得代替率(年金が現役世代の手取り給料の何%になるか)は
    世代間であまり変わらないように調整されている。

年金の話とは離れるが、以下の話は
元予備校教師の言葉だけに重みがある。

このように、本などの情報に接した時には、
その後の「復習の仕組み」をどのように作っておくのか
というところまでキチンと考えられるかどうかで、
学習効率は大幅に変わってくるものなのです!

私はこうやって書評を書いているので大丈夫。
でも、後で見返すとあんまり覚えてなかったりする。
人間の忘却力はあなどれないな!

年金の話の他にもサブプライムローンの話も
図入りでわかりやすく説明されている。
昔読んだ参考書とテイストが同じで懐かしかった。
オススメ度は★3つです。

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感想メモ:医薬品クライシス

医薬品クライシス―78兆円市場の激震 (新潮新書)
医薬品クライシス―78兆円市場の激震 (新潮新書)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 735
  • 発売日: 2010/01

★★★☆☆

製薬業界が大きな市場を持つことはなんとなく知っている。
しかし、どんな問題があるのかなどは、あまり知らないものだ。
そんなあなたに一歩進んだ知識を与えてくれる本。

ペニシリンの例は行きすぎだが、昔の新薬開発に比べて
現在の新薬開発は、精度も効率もかなり上がっている。
その一方、重要な分野での薬はかなりの部分が開発済みであり、
残っているのは重要だけれども開発が難しい分野に
限られてしまっているそうだ。

このことが、一発当たると年に数兆円という規模の売上が
可能となる一方で、一生研究しても一度も新薬を創り出せずに
終わる研究者の方が多いという現状につながっている。

盛んに進められている製薬会社の合併も、
莫大な開発コストを支えるだけの体力を持つため、
という側面が大きいようだ。

行政による対応も、医薬品に対する大きなファクターとなる。
例えば南アフリカでエイズが蔓延してしまったのは、
効果が証明されているエイズ治療薬の使用を認めようとしなかった
過去の大統領によるところも大きいようだ。

彼は「西洋の会社が作った医薬などは、
全てアフリカを害するための策略である」と公言し、
ドイツのメーカーによる抗HIV約の無償供与さえ拒絶した。

他にも、タミフルの副作用に関する一連の報道と規制の話は記憶に新しい。
これも、果たして本当に薬の副作用によるものなのか、怪しいようだ。

仮にすべての異常行動がすべてタミフルのせいで起こっていたとして、
異常行動による死の危険は四千万分の二十、すなわち約二百万分の一
ということになる。これは交通事故による死亡率二万分の一、
航空機事故による死亡率五十万分の一より遥かに低い値だ。

初期にタミフルを投与することで重篤化を防ぐという方針が、
日本における新型インフルエンザの死者が少ないという結果に
つながっている、と著者はいう。

業界の概要が理解できる本でした。
オススメ度は★3つです。

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感想メモ:ジェネラル・ルージュの伝説

ジェネラル・ルージュの伝説 海堂尊ワールドのすべて
ジェネラル・ルージュの伝説 海堂尊ワールドのすべて
  • 発売元: 宝島社
  • 価格: ¥ 1,260
  • 発売日: 2009/02/20

★★★★☆

「海堂尊ワールドのすべて」というサブタイトル通り、
チーム・バチスタの栄光」などのヒット作を飛ばしている海堂尊氏の作品をまとめた本。
ジェネラル・ルージュの凱旋のエピソードとして、「ジェネラル・ルージュの伝説」も収録されている。

一般的な話として「○○の世界」的な本というのは、ファンの人には
超うれしいが、普通の人にはそうでもない、というギャップが生じがちだが、
この本はそれほどファンではない私にも楽しめた。

理由はいくつかある。

一つは、海堂氏の本は医療問題を取り上げているが、
これがかなり現実とリンクしていること。
例えば、チームバチスタで取り上げられたのA.Iは、
まだ制度として認められていないもので、
海堂氏はこれを現実に用いられるように活動しているその一環として、
「チームバチスタ」書いたそうなのだ。
こういった流れをフォローできるのは、本編を読むのとは違った面白さがある。

もう一つは、作者の考えの裏側がわかること。
例えば、海堂氏の書く小説の世界は実は一つの世界であること。
あるいは、どういった執筆ペースで作品が作られているのかなど、
トリビア的におもしろい。

ということで、ただのまとめ本という以上におもしろかった。
医療問題は身近なだけに、興味をひくなぁ。
オススメ度は★4つです。

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感想メモ:ジーン・ワルツ

ジーン・ワルツ
ジーン・ワルツ
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,575
  • 発売日: 2008/03

★★★★☆

著者は「チーム・バチスタの栄光」の海堂尊氏。

題材は、不妊治療、代理出産、医療制度。
登場人物の口を借りての霞が関に対するメッセージは強烈。
お前等が無能なせいで医療の現場が崩壊してるんだ
一体どうしてくれるんだ、という感じ。
小説なので、どの程度現実に即しているのかが不明なので判断に困るが、
内容から察するに8割方正しいと読んだ。(本当のところは知らない)

不妊治療に関しても、保険適用にしないことに対する国への批判は
非常にまっとう。
子供を作ろうとしている人たちをサポートする姿勢を示さず、
何の少子化対策なのか。

ネタバレになるので詳細は書かないが、最後の展開はやり過ぎの感。
あんなの許されることではない。(何がかは、読めばわかると思います)

作者の力量は確かで、読ませる力がある。
一方で?という部分もあった。
ということで、オススメ度は★4つです。

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感想メモ:貧困の光景

貧困の光景
貧困の光景
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2007/01/17

★★★★☆

世界での貧困の現実

日本でも、貧富の差や貧困が問題となってきている。
しかしこの本を読むと、世界レベルで見ると
全然良い方なのだとわかった。

  • 私はもうその頃には、集めたお金を海外のどんな組織に渡しても、
    必ず一部は(それも非常に多くの部分を)盗まれる、
    つまり誰かのポケットに入れられるという事実を知るようになっていた。
  • 初めに私は、貧困の定義をしておこう。
    「貧困とは、その日、食べるものがない状態」を言う。
    従って日本には世界的なレベルで言うと一人も貧困な人がいない。
  • 素材で渡すと親たちはそれを栄養失調児に食べさせず、
    その兄姉たちに食べさせるか、ひどい時には、
    それを市場で売ってしまうからである。
  • つまり字も書けない、たし算も簡単な割り算もできない、
    衛生の観念もない、という人は、仮に先進国が投資によって
    何かの工場を作ったとしても、労働力として使えないのである。
  • 「もしHIVがプラスだとなると、親たちはもう、子供にミルクを
    与えないんです。いきる可能性のない子供に与える食事は、
    貧しい家庭にはないんです。」

生まれた瞬間からとんでもないハンデを背負った環境に
生まれてくることを、誰が防げるだろうか?
問題は、「人の命は平等」というような
きれい事では何も解決できない。

一方で、援助のためにお金を渡しても、目的のために使われない。
有力者が懐に入れて、支援したい人に届かない。
届いても、その日の暮らしのために使ってしまう。
教育が最も効果的なのだろうが、今日のご飯に困っている状況で、
どうすれば教育に力を注げるだろう。

月並みだが、日本にこの時代に生まれて良かったと心から思った。
そして、国際援助というのは、ただお金を渡せばいいのではなく、
思ったよりもずっと難しいものなのだとわかった。

認識を新たにしてくれた良い本でした。オススメ度は★4つ。

貧困の光景
貧困の光景
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2007/01/17

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感想メモ:公務員の給与はなぜ民間より4割高いのか

公務員の給与はなぜ民間より4割高いのか
公務員の給与はなぜ民間より4割高いのか
  • 発売元: 幻冬舎
  • 価格: ¥ 945
  • 発売日: 2008/12

★★★★☆

「公務員は民間よりも給与が高い」とはよく聞くが、
実際にどれくらい高いのだろうか?
賃金・人事コンサルタントの著者が、
様々なデータを元に検証している。

  • 公務員の給与は、30代程度までは民間大企業と同程度だが、
    定年間際まで上がっていくので、50代ではとんでもないことに
  • 愛知県職員(勤続40年)退職金は平均2800万
  • 人事院は自分たちの給与を下げるモチベーションがない
  • 国の給与の調査は、民間の大企業を中心に見るので不当に高く見積もる

 データをどこまで一般化できるのかは注意が必要だが、
傾向としては概ね正しいだろうと判断した。
「請求しても人件費のデータが開示されない」というのは、
何を示唆しているのだろうか。

 この本のもうひとつの楽しみ方は、読者の反応である。
amazonのレビューも、賛否両論あっておもしろい。
反応が多いということは、ある程度真実が含まれているのだろう。

 結論としては、やっぱり高いのだろう。
役所の人が民間に比べて特に能力が高いとも思わないし(逆も)、
それで給与に差があるのを見ると、割がいいと思うのが普通だろう。
だからこそ「息子は公務員に」となるわけで。

知っていて損はない知識が得られる本。
オススメ度は★4つ。

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感想メモ:天才! 成功する人々の法則

天才!  成功する人々の法則
天才! 成功する人々の法則
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,785
  • 発売日: 2009/05/13

★★★★★

天才を天才たらしめているものとは?

それは、才能と超人的な努力、だけではないのかもしれない。

  • NHLの選手に1月生まれが多く、日本のプロ野球やサッカー選手に
    4月生まれが多いのは、偶然なのか?
  • アメリカの大富豪のうち何人もが、数年という狭い範囲に
    生まれているのは、偶然なのか?
  • ユダヤ人のビジネス成功者の家系を遡ると
    同じような職業が現れるのは境遇が多いのは、偶然なのか?
  • IQが130を超える人たちの中で、成功する人としない人を
    明確に分けるパラメータとは?
  • アジア系の人が数学に強いのは、遺伝ではない?

いずれも「環境」というものが、天才と言われる人たちにも
大きく影響している事を示している。
つまり、同じぐらいの才能を持っていても、
生まれてきた環境が違うだけでアウトプットは変わってしまう!

それでは逆に、生まれ育った環境ですべてがきまってしまうのか?

著者はそうは言っていない。
教育によって「生まれてきた環境」という運命に近いものをも
切り開いていくことができるのだ、と示している。

私たち一般人は、「天才」という言葉を聞くと、
イコール才能、と思考停止におちいってしまいがちだ。
しかし環境や社会的な背景が与える影響というのは
思いのほか大きいものなのだとわかった。

1万時間という時間の壁を越えられる適性があれば、
案外「天才」はできてしまうのかもしれない。

子供にプラスの影響を与える環境とはどういうものなのか?
何を与えることができるのか?そんな視点で読むこともできる。
オススメ度は★5つ!おもしろい本でした。
Amazonのページにある著者のインタビュー動画もおもしろいです。
すごい賢そう。

同じような視座を与えてくれる本として、
ヤバい経済学、銃・病原菌・鉄を連想した。

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感想メモ:子どもの貧困―日本の不公平を考える

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)
子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)
  • 発売元: 岩波書店
  • 価格: ¥ 819
  • 発売日: 2008/11

★★★★☆

少子化対策にスポットが当たってきている。
担当大臣に「子供を持たない選択」とか言っていた人がなっているのは
内閣一流のジョークなのだろう。おもしろくないが。

さて、少子化対策と同様に、せっかく生まれてきた子供の幸せについても
考える必要があるだろう。
できるだけ幸せに育って欲しいと思うのは、誰しも同じだろうから。

しかしこの本では、あまり一般に知られていない衝撃的なデータが
いろいろと紹介されている。

まず、日本の母子家庭における貧困率の高さ。世界的に見ても有意に高い。
日本の労働市場の、女性や年配者に対する不条理な厳しさが現れている。
その結果、日本の子供の貧困率は15%近くとかなり高い。
6,7人に一人の計算。これは多い・・・

また、国の制度も問題が多い。
貧困世帯の税負担が、逆に多くなってしまっている。
そして、貧困世帯に育った子供は、将来にもその影響を受け続けてしまう。
いくら金持ち優遇とは言え、これはあまりによろしくない。

子供手当て政策も、ROIを考えるとより重点的に配分する方が
良いのではなかろうかと感じる。

知らないものは問題であることすら認識できない。
読んでおきたい本。オススメ度は★4つ。

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感想メモ:詐欺師のすべて

詐欺師のすべて―あなたの財産、狙われてます (文春文庫)
詐欺師のすべて―あなたの財産、狙われてます (文春文庫)
  • 発売元: 文芸春秋
  • 価格: ¥ 550
  • 発売日: 2002/07

★★★☆☆

詐欺。
あまり人生において遭遇したくない物の一つだ。
しかし自分がプロの詐欺師に目をつけられてしまったら?
対策としては、やはり相手の手口を知っておくことだろう。

普通の人は詐欺についてあまり詳しくないだろうが、種類としては
林真須美のヒ素カレー事件で有名な保険金詐欺を始め、
土地、契約書、有価証券偽造、商品のパクリ、無銭飲食・宿泊、などなど限りない。

手口としては、訪問販売、電話勧誘、マルチ商法、点検商法、
景品付き販売、当選商法、などなどこちらも限りない。

詐欺のプロは、ターゲットが他の人に相談しないように、孤立させようとする。
従って、こういった知識を持っておいて、自衛するしかない気がする。

「最後に詐欺の鉄則十五箇条」が興味深いので紹介しておく。

  1. 「自分は詐欺師ではないとの信念を抱け」
  2. 「演技力を磨け」
  3. 「権威を利用せよ」
  4. 「人の弱みをにぎって活用せよ」
  5. 「無価値のものを価値あるように見せかけよ」
  6. 「真実を核にして嘘を構築せよ」
  7. 「最初はまともな話で相手を安心させよ」
  8. 「騙すなら徹底して騙せ」
  9. 「前科のない者を表に立てよ」
  10. 「必要なら契約書をつくって安心させよ」
  11. 「相手をあわてさせ、冷静さを失わせよ」
  12. 「あらゆる手段を使って時間を稼げ」
  13. 「引き際を心得よ」
  14. 「強い返済要求には応じよ」
  15. 「騙し取った金は隠しとおすか使い切れ」

あまり読んでいて楽しくはないが、生きていくには必要な知識かも。
オススメ度は★3つ。

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