丘サーファー

−今日は日本の丘サーファー第一人者である、丘 乗夫さん(仮名)にお話を伺いたいと思います。 丘さんよろしくお願いします。

丘:よろしく。

−さて、まず丘さんが丘サーフィンを志した理由から、お聞きしたいと思います。

丘:小さい頃、テレビでサーフィンの大会をやってるのを見たんです。 でっかい波を自由に乗りこなして、真っ黒に日焼けしてて、それでいて歯が白くて。 これはカッコいいぞ、と思いました。オレもこんな風になりたいぞ、と。 ところが、私は長野県に住んでいたので、海がなかったんです。

−乗りたくても波がない、と。

丘:ええ。これでは県外に出ないとサーフィンができないんです。 この現実に気付いたときには目の前が真っ暗になりましたが、 長野に誇りを持っていたので、海がないことを言い訳にはしたくありませんでした。 あきらめきれなかったんです。

−サーフィンへの憧れはそれほど強かった。

丘:いろいろ考えました。 海がないなら作ればいいじゃないかと思い立ち、近くの池に塩を大量に入れてみたり。 次の日、魚がいっぱい腹を上にして浮かんでて、びっくりしました。

−しょっぱくなっても波は立たない(笑)

丘:そう、そう(笑)。結局海を作るのはあきらめました。 次に思いついたのは、海があることにすることでした。

−あることにする、ですか?

丘:そうです。海があると思えば、そこに海はあるんですね。 ないと思うから、ないんです。 気付いてしまえば簡単なことなんですが、目の前がパッと明るくなりましたね。 やっとサーフィンができる!と。

−よくわかりませんが、よかったですね。

丘:後は波に乗るか、丘に乗るかの違いだけでした。

−水と土との違いは気にはならなかったのですか?

丘:最初は戸惑いました。パドリングしても、全然進まないんですよ。 それこそ5cmずつぐらいしか進まない。 しかし1ヶ月ぐらい悩んでいて、ある時ボードを脇に抱えて走ってみたんです。 やはりパドリングよりも全然速いんですね。これで問題は解決しました。

−水の上だと、走れるのは忍者だけですからね。 ところで失礼ですが、回りの目は気になりませんでしたか?

丘:新しいものは、回りの反発を招くのはわかっていましたから。 イチローの振り子打法も、最初は認められなかったそうですから。

−自分をイチロー選手に例えるのはどうかと思いますよ。

丘:道具も変えました。ボードを丘用にしたり、ウェットスーツも丘用に一から作り直しました。 あとは、いろんな丘に乗りに行きましたね。 初めて鳥取砂丘を目の前にした時は、感動で足が震えました。これか、と。

−その熱意が今の丘さんを支えてきた。

丘:全てを丘にぶつけて行った結果が、今につながったんだと思います。

−最後に、これから丘サーフィンを始める読者に向けて、メッセージをお願いします。

丘:丘サーフィンは、楽しいことばかりではありません。 時には、海に逃げたくなるときもくるかもしれません。 でも、丘はウソをつきません。丘にもいい風が吹いてますよ。

−ありがとうございました。


続編