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感想メモ:夢に迷う脳——夜ごと心はどこへ行く?

夢に迷う脳——夜ごと心はどこへ行く?
夢に迷う脳——夜ごと心はどこへ行く?
  • 発売元: 朝日出版社
  • 価格: ¥ 2,415
  • 発売日: 2007/07/18

★★★★★

 「脳は起きているときは働いていて、寝ているときは休んでいる」
という一般的な考えは、実は全く違っている。
寝ているとき、特に夢を見ているときの脳は、覚醒時とはモードが違うだけで、
実は活発に活動しているのだ。

 驚いたことに、夢を見ている時の脳の状態は、
薬物などで幻覚を見ている精神錯乱状態の患者と「全く同じ」特徴を示すという。
違いは、起きているときにもイレギュラーに発生するか(精神錯乱)、
あるいは寝ているときに規則的に現れるか(正常な夢)だけだ。
これらは「似ている」のではなく、脳は「同じ」状態である・・・。

 というような、脳と心と睡眠についての説明が、
睡眠に関する研究で長年第一人者であり続ける著者により、
脳科学の研究成果を踏まえつつも、わかりやすく述べられている。

 睡眠時に脳はどう活動しているのか?
なぜ夢は覚えていられないのか?
なぜ夢は非現実的な設定なのに、その不自然さに気づかないのか?
読後はこのような疑問に答えが得られ、睡眠について理解が深まるはず。

 とてもおもしろかったので★5つ!オススメ。

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感想メモ:海馬/脳は疲れない

海馬/脳は疲れない ほぼ日ブックス (ほぼ日ブックス)
海馬/脳は疲れない ほぼ日ブックス (ほぼ日ブックス)
  • 発売元: 朝日出版社
  • 価格: ¥ 1,785
  • 発売日: 2002/07/10

★★★★☆

 池谷裕二と糸井重里の対談本。サラッと読める。

 脳は誰もが持っている、それでいて何をするにも最も重要な器官である。
その性質や仕組みについて、もっと知りたいと思って読んでみた。

 脳については
「一般に信じられているけれども、脳科学の研究結果とは異なっている」
というケースがままあるようだ。
例えば睡眠について。

 普通の人は、「睡眠中は脳は休んでいる」と信じて疑わない。
しかし実際は、寝ているときも、脳は活発に活動しているそうな。

 例えば、記憶の固定。
これは主に睡眠中に起こっているため、
暗記物はきちんと睡眠を取った方が成績が良くなるそうなのだ
(一夜漬けは記憶に残らないというのは本当らしいですよ)。

 特にレム睡眠中は、その日にインプットした情報を高速に追体験して、
海馬が情報の要不要を取捨選択しているそうな。おもしろい。

 こんな「へー」的なマメ知識や、日常生活に取り入れられそうな
ノウハウもてんこ盛りでおもしろかった。★4つ。

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感想メモ:記憶力を強くする

記憶力を強くする—最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス)
記憶力を強くする—最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス)
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,029
  • 発売日: 2001/01

★★★★☆

 「歳をとると記憶力が悪くなる」「歳をとると物忘れが激しくなる」
というのは良く聞かれるフレーズだ。
しかし「それは誤解」と著者は言う。

 確かに歳をとると、神経細胞の総数は減っていく。
しかしシナプスの数は逆に増加していくというのだ。
このことは、歳をとると記憶容量は大きくなることを示している。

 ただ、年齢によって得意とする記憶の種類が変化するのだ。
若いうちは、脳は丸暗記のような記憶に適している。
それが歳をとるにつれ、丸暗記の能力は下がるが、
その代わりに論理だった記憶能力(エピソード記憶)が発達していく。

 つまり年齢によって得意とする記憶の種類が変わるだけなのだ。
従って、歳に応じた記憶の仕方をすることが重要だということになる。

 これだけでもかなり興味をそそられるのが、他に眠りや夢に関する記述もあり、興味深い。全体を通じては、まとめるのがうまく文章もわかりやすい。

 記憶は誰の生活にも密接に関わり、避けることはできない。
脳についての知識は、知らないと損だと思う。★4つ。

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感想メモ:ラストホープ 福島孝徳

ラストホープ 福島孝徳 「神の手」と呼ばれる世界TOPの脳外科医
ラストホープ 福島孝徳 「神の手」と呼ばれる世界TOPの脳外科医
  • 発売元: 徳間書店
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2004/03/20

★★★★★

ゴッドハンドと呼ばれる、脳外科医福島孝徳氏。

彼一人が年間にこなす手術数は、他の日本人全体の手術数を上回る。
更に、手術の成功率も抜群。
一体どうしたら、彼のような人ができるのだろうか。

才能、というのは必要条件だろう。
福島氏の場合、天性の手先の器用さというのはまずある。
そして尽きることのないエネルギー。これも天性のものだろう。

しかし、才能だけではこれだけの実績は残せないと感じる。
イチローにしても高橋尚子にしても、才能+たゆまぬ努力があってこそ、
天才と言われる実績にたどり着くのだろう。

その努力を支えるのはなんだろう。
そのヒントは福島氏の以下のセリフにある。

・Passion(情熱)
私の人生そのものがパッション。全身脳外科人生です。

・Love(愛)
天職としての脳外科を愛しています。もちろん妻や子を愛していますが、妻には「あなたは脳外科と結婚したひとよ」と言われたりします(苦笑)。

・Happiness(幸福)
自分がやりたいと思うことを続けてきて、こんなにもうまくいっている。そのことに幸せを感じるし、日々神様に感謝しています。

・成功(Success)
手術をして
最高の結果が出ること。それが私にとって唯一のサクセスです。

・Growth(成長)
一日一日、少しでもいいから進歩したい。どうやったら自分の手術がもっと良くなるかをいつも考えてます。それをやめたら私の成長は止まってしまう。

情熱。

これこそが、福島氏の努力を支えているものの正体だ。
自分がやりたいことを、愛していることをやり、その上で結果を残している。
おそらく彼は、人生幸せだと感じていることだろう。

「成功者の話を聞いても、自分の成功とは関係ない」
という意見もある。しかし私は反対の立場だ。

なぜなら、成功者の話には共通点が見られるということは、
進むべき方向はわかるということだからだ。
到達することは難しくても、近づくことはできる。
実行が難しいのと、不可能であるのとは全く別の話だ。

福島氏の言うように、
「一日一日、少しでもいいから進歩したい」
この気持ちを持ちながら生きていくことが大事なのだろうと感じた。
自分は、今日、少しでも進歩したか?
こう問いかけるだけでも意味がありそうだ。

他にも、医療制度に関する話もおもしろい。
私は、以下のように考えていた。
医療現場の労働環境が過酷なのは医者不足が原因なのだから、医者を増やせばいい。
でもそれは、医療業界側が絞ってきたという側面もある、と。

しかし福島氏の意見はこうだ。
日本は医学部に入った人のうち100%に近い人が医者になる(ドイツやフランスは10%程度)。
従って、数は足りている。ただ、カリキュラムに問題があり、
臨床の経験が不足している医者が大量に生まれている。
医者が足りないと感じられるのは、一部の限られた病院に医者が集中しているから。

氏の提案は以下の通り。
医学部は数を減らし、質を向上させる。
カリキュラムを刷新し、臨床経験を多く積ませる。
具体的には、一般教育と基礎医学過程を4年から2年に縮め、臨床を2年から4年にする。

ということで、いろいろとためになる良い本だった。★5つ。

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感想メモ:面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則

面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則
面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則
  • 発売元: 大和書房
  • 発売日: 2009/01/15

★★★☆☆

面倒くさがりだからこそ、放っておいて後々面倒なことにならないよう、先に手を打つ。

という理屈で、面倒くさい事態を回避するために生活の効率を上げる、
55のコツが書かれている。
つまるところ、ライフハック本だと読んだ。

中には、確かにやっておくとよいけれども、
本当の面倒くさがりはあまりやらないような項目もある。
例えば「面倒くさいから聞く前に調べる」とか「面倒くさいから英語を勉強する」とか。
それはさすがに苦しいかと。

この本を読んでいて考えたのは、
なぜ人は面倒くさいことに弱いのだろうか、ということ。
そもそも人間の脳は、未来の大事なことよりも、
目の前のどうでもいいことに心を奪われるようにできているそうだ。

これは重要さの判断ができないわけではなく、
時間が先になると双曲線的にその重要さを割り引いて
認識してしまうからだそうだ。
つまり、目の前のちょっとしたことに、
未来のとても重要なことが負けてしまうということだ。
(参考:誘惑される意志
ギャンブルや締め切り前の掃除などが良い例。

つまり、
「後々のことを考えて、今のうちにやってしまおう」
と考えることは、本能に逆らう難行なのだ。

だからこそ、未来の事態の重要さをしっかり認識し、
段取りをしっかり組める人は、貴重で重宝されるのだろう。

ということで、私の感想としては、
「先のことを実感をもって想像し、モチベーションを失わずに行動をする/続ける」
仕組みづくりが必要かと思った。
それには、この本にも書いてある通り、脳科学や心理学の本がオススメ。
ということで、★3つ。

今更だが、著者はレバレッジシリーズの本田直之氏。
本田氏のlifehack系の本では、脳が教える! 1つの習慣がオススメ。(監訳だが)

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感想メモ:あなたの話はなぜ「通じない」のか

あなたの話はなぜ「通じない」のか
あなたの話はなぜ「通じない」のか
  • 発売元: 筑摩書房
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2003/10

★★★★☆

話が通じない。

といっても様々なレベルがある。
理屈が通っていないというケースもあれば、
そもそも信用されていないというケースもある。

そんな中、自分のいいたいことを、
反感を買うことなく相手に受け入れてもらうにはどうすればいいだろうか?

そんな問いに、ベネッセコーポレーションで進研ゼミの小論文を担当し、
後に独立した山田ズーニー氏が自身の経験談を踏まえて語る。

  • 自分のメディア力を上げる
    「あの人が言うことなら確かだろう」と信頼されるメディアになる、ということ。
    それにはまず、自分がどう見られているかを意識する必要がある。
  • 相手にとっての意味を考える
    ダメ出しに感情で反発するのではなく、相手と共通する思いを探し、
    そこを土台にする。
    共通する思いがゼロ、というケースはまずない。
  • 論理
    基本は
    テーマ→問い→意見→理由
    の流れ。
    人の話を聞くときもこの流れでシンプルに考えると整理しやすい。
  • 問いの立て方
    適切な問いが思考を広げ、また目的を具体化する。
    問いを立てる力が非常に大事。
  • 問いを助けるツール
    ・5W1H。WHYは本質を問う。ここぞというときに。
    ・100本ノック
    テーマについて問いを100個考えてみる
    ・時間、空間、人の3軸
    過去現在未来、他社他業種他地方他国、自分相手先輩後輩など。

他にも、なぜ正論は受け入れられないのか?
もつれて感情的になりそうな相手に共感する/してもらうには?
など、誰しもが悩む問題に対して、
経験談を交えて実用的な答えを示している。

いくら自分が正いこと/良いことをしていると思っても、
そのことを周りの人に理解してもらっていないと不幸なことになる。
相手のことを考えましょう。
良い本。★4つ。

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感想メモ:コンサルタントの「質問力」

コンサルタントの「質問力」 (PHPビジネス新書)
コンサルタントの「質問力」 (PHPビジネス新書)
  • 発売元: PHP研究所
  • 価格: ¥ 840
  • 発売日: 2008/03/19

★★★☆☆

 気の利いた質問をするというのは、なかなか難しい。

 普通に話を聞くと、はぁそうですか、で質問もなしに
終わってしまうことが多いのは、誰しも心当たりがあるだろう。

 コンサルタントというのは質問をするのが商売なわけで、
良い質問をするにはどういうことが重要なのかを説明している。

 その答えが

  • 「仮説力」
  • 「本質力」
  • 「シナリオ力」

という言葉でまとめられている。

それぞれ、

  • 仮説を持って話を聞いて質問する
  • 本質を捉えた質問をする
  • 質問をすることでどう話をまとめようか、とシナリオを考え、
    そのように話が進むように質問する

ということだそうだ。

 確かに内容はその通りだと思う。
それらの力がつけば、良い質問ができるだろう。
それでは、どうすればその力が付くのか。

 コンサルタントの人が使っている考え方のツールは紹介されている。
「頷く、聞く姿勢を持つ」というような姿勢や心構えは紹介されている。
しかし、使えるようになるかは一段別の話だ。

 ということで私の読んだ感触では、既に考え方ができている人向け。
つまり、私は読んでもあまり身に付かないと思った。☆3つ。

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感想メモ:編集者という病い

編集者という病い (集英社文庫)
編集者という病い (集英社文庫)
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 650
  • 発売日: 2009/03/19

★★★★☆

 見城徹という鬼才

 鬼才なんて言葉めったに使うことはないのだが、この言葉がふさわしいと感じた。
編集者という職業は、作家に比べて表に出て来ることが少ない分、
どういうことをしているのか、わかりにくい。
しかし、これが編集者というものか!と認識を新たにした。

 尾崎豊、坂本龍一、宮本輝、村上龍、石原慎太郎、五木寛之。
様々な分野で活躍する人々と濃密に、それもハンパなく濃密な付き合いをしている著者。
表現者という、ある種心に歪みを抱えた人々の心に深く切り込み、
この人になら任せられると思わせること。
そういう関係をいかに築くことができるかが、編集者のキモなのだと著者は言う。

 しかし一方で、これは異常だと感じる。
こんな人付き合いを100人単位の人間と持っているなど、普通精神が持たない。
と思ったら、著者は筋金入りの不眠症で、耳鳴りも止まらず、心臓も悪いらしい。
そして当然、全ての編集者が彼のようなやり方ができるはずもない。
まさに「編集者という病い」。いいタイトルだ。

 様々な媒体で書かれた記事の再録も多く、エピソードの解説の重複も多々見られる。
しかしなお、一読の価値がある。★4つ。

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感想メモ:一瞬で心をつかむできる人の文章術

一瞬で心をつかむできる人の文章術―1日たった15分10日間で上達!
一瞬で心をつかむできる人の文章術―1日たった15分10日間で上達!
  • 発売元: コスモトゥーワン
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2007/11

★★★☆☆

 文章をうまく書きたいけど、どう書けばいいかわからない。
文章を書くのがなんとなく苦手・・・

 そんな人のために、文章スクール主宰の著者が
うまく文章を書くためのコツやアイデアを書いている本。

 ストーリー仕立てで書く、5W1Hで書く、会話や心のつぶやきを入れるなど、
テクニックも色々と書いてある。
また、結論から先に書く、じらす、など構成についてもヒントが書かれている。

 しかし、である。

 結局文章がうまくなるには書くしかないのだ。
書くことを習慣にし、書くことが自然になるまで書くしかない。
1回の授業より100回書くことである。

 従って、一冊本を読んだところで即文章がうまく書けるようになるわけではなく、
文章を書くという習慣をいかに付けるか、というところが肝心である。
本書ではそこにあまりページは割かれてはいないが、長さは気にせず日記を書くことが勧められている。

 読後の感想は、タイトルはキャッチーだったなということだった。
期待しすぎたか。★3つ。

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感想メモ:夜と霧

夜と霧 新版
夜と霧 新版
  • 発売元: みすず書房
  • 価格: ¥ 1,575
  • 発売日: 2002/11/06

★★★★☆

 極限での心理状態

 アウシュビッツを生き抜いた心理学者の著者が、
その極限状態の心理分析という視点でその体験を書きつづっている。

 右へ行けば死、左へ行けば生。
掛け値なしにそういった判断が何十も積み重なっている。
そんな中で人間は、人間らしさを残したまま生きていけるものなのか?
そこに自らのあり方について選択の余地があるものなのか?
自分ならどうなるだろうか?

 考えさせられる。

 どんな状況にでも人は適応してしまう、できてしまうのだという事実を
自ら身をもって確認する状況。できることなら体験せずにいたい。★4つ。

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